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駅伝で人が倒れた! AEDを取りに走ったのは、中学生だった

By - grape編集部  公開:  更新:

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2015年1月、山口県で開かれた駅伝大会の中継所で、緊急事態が発生しました。区間を走り終えた60代の男性が倒れ、仰向けのまま意識不明に。

居合わせた医師が心臓マッサージを行うも、反応はなく…。

しかし、間もなく医師のもとに『AED』が届けられ、電気ショックの処置が行われました。倒れた男性の心臓は処置によって動き始め、現在では倒れる前と変わらない生活を送ることができているそうです。

男性の心臓が動き始めたのは、倒れてから11分後。救命率は、心肺停止してからの時間が1分たつごとに7~10%ずつ下がっていくと言われています。もし、AEDの到着が遅れていたら事態はもっと深刻なものになっていたかもしれません。

AEDを取りに走ったのは中学生だった

このとき、医師のもとにAEDを届けたのは中学3年生の男子生徒。男子生徒は駅伝で、倒れた男性と同じ区間を走り終えたところでした。男子生徒は倒れた男性の様子を見て「不自然な状態だ、AEDが必要」ととっさに判断。男性は口と目が半開きの状態で、胸が動いていなかったそうです。男子生徒は「心臓が停止している」と考え、すぐに走り出しました。

「僕がこんなことをしていいのだろうか…」そう不安も感じつつも、「運動施設ならきっとAEDがあるはずだ」と、近くのフィットネスクラブへ。そこにあったAEDを手に、倒れた男性のもとに駆け戻りました。

男子生徒が到着したのは、心臓マッサージで反応を得られなかった医師が「あとの手段はAEDか…」と考えて間もなく。医師が処置をできるよう、AEDのふたを開けたのは男子生徒自身だったそうです。

大人でも迷う可能性のある判断を瞬時に行った男子生徒の行動は、本当に見事でした。

男子生徒が行動できたのは、学校の教育があったから

なぜ男子生徒は、とっさに正しい判断をし、それを行動に移すことができたのでしょうか。

駅伝の半年ほど前、男子生徒は学校で救急救命士による講習を受講していました。

そこで彼が知ったのは、さいたま市の小学校に通っていた女の子、桐田明日香さんの出来事でした。当時小学6年生だった明日香さんは、学校で心臓発作を起こして倒れてしまいました。学校にはAEDがあったにもかかわらず、それは使われないまま。明日香さんは命を落としてしまいました…。

明日香さんの出来事をきっかけにして、さいたま市では、すべての小学校でAEDと心肺蘇生の授業を始めています。

しかし、その他の地域ではまだ学校でのAEDの講習、教育が普及しているとは言えない状況です。

AEDを取りに走った男子生徒も「学校の授業を受けていなかったら、一瞬で判断することができなかった」と話しています。例えば学校で子供が倒れた時、第一発見者となるのは子供である可能性が非常に高くなります。その時、大人を呼びに行く・AEDを取りに行く、その行動をとるためには、学校での授業が必須となるでしょう。

「救える命があるのに救うことが出来なかった」 明日香さんの出来事が深く心に残っていた男子生徒は、勇気をもって行動に移りました。学校での教育が普及すれば、「救える命」はより増えていくことに間違いありません。

大人こそ行動しなくてはならない

私たち大人は、自主的に講習を受けに行くことができ、インターネットでより詳しい情報を得ることもできます。

とっさの時に、勇気が出るかどうか。それは知識がどれだけあるかにも関わってくるのではないでしょうか。いつ起こるか予想がつかないアクシデントに遭遇した時に、自分が恥ずかしくない行動をとれるように。もし子供から助けを求められたら、正しい指示と行動がとれるように。さまざまな事例に目を向けて、知っておくことも大切です。

普段自分が通る道、どこにAEDがあったか、とっさに思い出すことができるでしょうか。

役所、駅、ホテルや商業施設、運動施設、公園、小学校、中学校、高校…。このあたりは思い浮かぶかもしれません。

市区町村のホームページで、消防署が確認が取れた設置場所を掲載している場合があります。お住まいの地域や、よく訪れる地域の情報を一度調べてみても良いかもしれません。自宅から一番近いところはどこか、知っておくのも良いでしょう。

例えば大切な家族が倒れて心肺停止になったとき、救急車が到着するまでの措置が非常に重要です。助かるかどうかは、一番そばにいる人の行動次第と言えます。

まずは、大事な人のために、知識を身に付ける。そしてその身に付けた知識を、他の誰かのために役立てられれば最善ではないでしょうか。

桐田明日香さんの死をきっかけに作られた救命プロジェクト

心肺蘇生法とAEDの使用方法についての動画

出典
AED 学校での教育が命を救う[「NHKニュース おはよう日本」より]cowardlionShutterstock.com

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