理不尽な暴力で殺害された青年 理由は同性愛者だったから…

出典:YouTube

1998年10月7日、アメリカのワイオミング州ララミ。村の端にある丘の上で、木のフェンスに縛られている一人の青年が発見されました。

通りすがりの人によると、彼の全身は血まみれで、特に顔の傷がひどかったそうです。青年はすぐ病院に運ばれ、脳の手術を受けることになりました。しかし、彼は二度と意識を取り戻せず…5日後に天国へ旅立ってしまいました。

原因は、何者かによる集団暴力。

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青年の名前は、マシュー・シェパードさん。ワイオミング大学に通う、まだ21歳の学生でした。大学では、環境委員会の代表に選ばれるほど社交的で、誰にでも優しい性格。友達も多かったそうです。

そんなマシューさんが、無惨に殺されてしまった理由はただ一つ。彼が、ゲイだったからです。

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事件の当日、バーで酒を飲んでいたマシューさんに二人の男性が近づいてきます。なれなれしく話を続けながら、自然とマシューさんの隣に座る二人。

しばらくして、酔ったマシューさんを二人が送ってあげると言い出し、そのまま車に乗せて丘へ向かったのでした。

裁判で二人は、「最初の目的はマシューさんの財布だった」と話し、「彼がゲイだと知って怒りが止まらなくなった」と白状しました。

二人は「同性愛嫌悪主義者」だったのです。取り戻せない罪を犯した二人に下りた判決は、終身刑。

同性愛者だというだけで殺されたことに、たくさんの人がショックを受けました。

始まる同性愛反対者のデモ

騒ぎはこれだけでは終わりませんでした。この事件がきっかけで、あちこちで同性愛を反対する人々のデモが始まります。

マシューさんのお葬式にも、裁判所にも、大勢の人々が詰めかけて声を上げました。彼らが持つボードに書かれていたのは、ひどい言葉の数々…。「ホモは国を亡ぼす」「マシューは地獄に落ちろ」

しかしそんなデモ行動にひるまず、マシューさんの友人たちが動きました。

友人がした行動は、白い天使の服装をして、デモする人々の周りを静かに囲むこと。声を出すこともなく、ただ静かに彼らを包むだけ。

この行為は「Angel Action」とも言われています。

同性愛者は法で保護されない…

アメリカでは1968年、キング牧師によって「ヘイト・クライム保護法」が作られました。

ヘイト・クライムとは?

民族や人種、宗教など、自分とは違う人へ理由もなく憎しみを抱き、暴力や被害を与える犯罪行為のことです。また、その行為を法律的に禁ずることでヘイト・クライムによる犯罪を予防することを、ヘイト・クライム保護法と言います。

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しかし、同性愛者は、ヘイト・クライム保護法の対象に含まれていません。マシューさんの事件をきっかけに、人々は保護対象を増やすべきだと声を上げ始めました。

1999年、マシューさんの両親、ワイオミング大学の学生たち、LGBT団体の人々は、同性愛者を保護対象に含む新しい法案を上院に提案しますが、通りませんでした。

そして、2007年にもう一度保護法の制定を訴え、やっと上院に認められます。しかし、ブッシュ大統領の拒否権によって取り消されてしまいました。

通った法案の名称は「マシュー・シェパード憎悪犯罪禁止法」

マシューさんの事件から、11年が経ちました。多くのLGBT団体が、同性愛者を保護対象に入れることは不可能だと思い始める頃…。

2009年、法案はオバマ大統領によって、ようやく正式に認められました。

マシュー・シェパード憎悪犯罪禁止法

まだ若い、21歳だった青年、マシュー・シェパードさん。あっけなく消えた彼の死を忘れないように、法案を通すために努力した人々は彼の名前をつけることにしました。

消えない差別

やっと同性愛者たちが、法律的に保護されるべき対象となりました。にもかかわらず、同性愛反対者の犯罪は増えていくばかり。

そのような現状に、オバマ大統領はこう言い続けます。

「我々は、人間の尊厳性を尊重しなければいけない。」

2015年1月にあった国政演説では、アメリカの大統領で初めて「LGBT」を発言し、彼らの人権問題について強く語りました。

そして2015年4月には、性的少数者を「治療の対象」として治療することを禁止。さらに、7月には採用において、性転換手術を受けたトランスジェンダーたちを差別することも禁ずるなど、同性愛者たちの場を広げることに力を入れています。

「平等な世界へ向かうために、我々は大きな一歩を踏み出した。我々はまた、アメリカを完璧に近づけることができた。」

LGBT雑誌の表紙に

2015年11月10日。オバマ大統領は、アメリカの大統領として初めて、LGBT雑誌「OUT100」の表紙モデルになりました。

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出典:OUT

差別に反対するために、政治を始めたというオバマ大統領。彼の行動力が、差別のない国へと繋がっていくことでしょう。

マシューさんの事件があった1998年から比べ、同性愛を応援する人の声も増えてきました。しかし、同性愛反対者による犯罪は今だに続いています。

同性愛に対して反対・賛成どちらの気持ちを持つのも、個人個人の自由。しかし、その自由を「理由」に、人に傷つけることは決してあってはならないこと。もう二度と、マシューさんのような犠牲者が増えないことを願います。

出典
MATT SHEPARD IS A FRIEND OF MINE: Official 2014 TrailerOUTfeminismandreligion

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