「両親が二人とも耳が聞こえないんです」絵と手話で人をつなぐアーティスト

手話をモチーフに絵を描き続けるアーティスト【10時のグッとストーリー】

「手話」をモチーフにした絵を描き続け、様々な人をつなぐワークショップを主宰しているアーティストのグッとストーリーです。

人々が行き交う路上に置かれた、ダンボール製の巨大なキャンバス。

そこに大人も子供も、クレヨンで自由に絵を描き、一つの作品を創り上げていく「らくがきダンボール」。

門秀彦

門秀彦さん

輪の中で、参加者と一緒に絵を描いている主宰者が、門秀彦(かど・ひでひこ)さん・46歳。

ポップなタッチの絵で、幅広い分野で活躍している門さんですが、その絵の重要なモチーフになっているのが「手話」。

作品に出てくるキャラクターの手のポーズが、よく見ると手話になっていたりしますが、それは、門さんが育った環境にも関係がありました。

実は、両親が二人とも耳が聞こえないんです。

…そういう門さんは、耳が聞こえますが、両親が家で交わす会話は手話だったので、自然と手話を覚えていきました。

しかし手話に慣れすぎて、保育園に通い始めると、困ったことが。

みんなの会話になかなか入っていけないんですよ。テンポが速すぎて…

でも、みんなとは話したい。そこで門さんが考えたのは、「絵を描くこと」でした。

両親と家で話すとき、手話で表現しきれない部分は、絵を描いて説明していた門さん。得意の絵で、みんなの気を引こうと考えたのです。この作戦は大成功。

『門くん、今度はあれ描いて!』『私にも!』ってみんなに頼まれて、とても描ききれないので、家に持ち帰って描いてました。

絵を描くことで、人に喜んでもらえる快感…それが今の活動の原点になっているという門さん。

僕は、初めからアートを目指したわけじゃなくて、人とコミュニケーションする手段の一つとして、絵を描き始めたんです。それは今も変わらないですね。

アーティストとして様々な分野で活躍するようになった門さんが、創作活動と並行して始めたのが、耳が不自由な子供たちが通うろう学校(特別支援学校)で絵を教えることでした。

文化祭の日に、たまには普段の創作活動も見てもらおうと、キャンバスにその場で絵を描いていく「ライブペインティング」を生徒たちの前で披露したところ、思わぬことが起こります。

ある生徒が突然、キャンバスに寄ってきて「ボクも描きたい!」と言い出したのです。

先生は止めようとしたんですが、僕は『面白い』と思ったんですね。他の子たちも入ってきたので『よし、みんなで一緒に描こう!』って言いました。

しかし、小さいキャンバスに、みんなでいっぺんに絵を描くことはできません。

お互い順番を譲り合ったり、協力し合ったり…子供たちが自然とそういう行動を見せたことに驚いた門さんはその後、積極的にワークショップを開くようになりました。

門秀彦

ワークショップの様子

絵の上手・下手を問わず、誰もが自由に、描きたい絵を描ける門さんのワークショップは、海外でも開催され、表現することの喜びを実感できるということで、大きな反響を呼んでいます。

絵と同様、手話も思いを伝える表現と考えている門さんは、去年、手話をモチーフにしたポップな絵本『ハンドトーク ジラファン』(小学館)を出版しました。

「ハンドトーク」とは、門さんによると、手話だけでなく、絵や音楽など、手を使って行う表現全般を指す言葉。

この絵本に出てくる、手のような耳を持ち、手話で会話する不思議な動物・ジラファンは「ハンドトーク」の象徴として描かれています。

ハンドトーク ジラファン

ハンドトーク ジラファン (著) 門 秀彦

主人公は、口下手で友達がいない少年・マール。

ジラファンをはじめ、ハンドトークを操る動物たちと出逢い、コミュニケーションを重ねていくうち、マールは自分が決して孤独ではなく、たくさんの仲間がいることに気付きます。

絵本の最後には、こんな言葉が…

みんなともだち ひとりぼっちじゃないよ。

【10時のグッとストーリー】八木亜希子 LOVE&MELODY 2017年6月3日(土) より

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出典
手話をモチーフに絵を描き続けるアーティスト【10時のグッとストーリー】

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