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「殺処分しなくてもよいのでは?」奄美大島の計画に獣医師たちが異論

By - grape編集部  公開:  更新:

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環境広告会社の株式会社サステナが、奄美大島と沖縄県が検討する計画に対して、獣医師などが署名を集めていると発表しました。

奄美大島と沖縄県の世界遺産登録を目指し、環境省がノネコの捕獲を検討。捕獲後、譲渡できずやむを得ない場合は、殺処分する可能性について、疑問が投げかけられています。

ノネコとは、イエネコが野生化した個体群で、通常は野良猫と同意で使われています。

2週間で4万人が署名

奄美大島とその周辺は、『アマミノクロウサギ』や『ヤンバルクイナ』といった希少種が生息する、世界自然遺産の候補地です。

環境省は、人間に捨てられた猫がアマミノクロウサギを捕食するとして、ノネコの捕獲を検討。捕獲後に譲渡先を探すものの、見つからない場合は安楽死させる可能性を示唆しました。

しかし、そこに犬猫の殺処分ゼロを目指す『NPO法人ゴールゼロ』や獣医師たちが異を唱えているのです。

死因は捕食よりも事故が多い

2016年に環境省が発表した、断定できたアマミノクロウサギの死因は、100%が交通事故だったそうです。

2000年から2013年までの死因調査を見ても、捕食と断定された割合は数%程度と低いものでした。

ノネコがいても生息数が増加

奄美大島に近い徳之島では、ある取り組みを行うことでアマミノクロウサギの生息数を増加させることに成功しています。

公益財団法人どうぶつ基金と地元3町が、猫の繁殖対策として不妊手術をして、元の場所に戻すという『TNR不妊手術』を1年に渡り実施。徳之島に住む猫の70%が、不妊手術を終えた『さくらねこ』となりました。

2016年度末までには、95%の猫の不妊手術が終わり、現在もこの活動は継続されています。

『TNR不妊手術』を行っても、徳之島の猫の数は変わりません。しかし、徳之島のアマミノクロウサギの生息数は増加し、生息域も広がりを見せる結果となりました。

こうした理由などから、ノネコの殺処分をすればアマミノクロウサギの数が増えるとはいえない状況になっており、「根拠が怪しい」と獣医師たちから声が上がっているのです。

『NPO法人ゴールゼロ』などは、奄美大島や沖縄県でも徳之島のように不妊手術を行うことで、猫を殺さずに希少種を守り、世界自然遺産登録を成功させようと運動をしています。

『世界遺産を口実に、奄美や沖縄の猫を安易に殺処分しないでください!』と署名運動を行ったところ、開始2週間で4万人を超える署名が集まりました。

2017年10月31日には、沖縄県知事と環境省那覇自然環境事務所へ署名を持参し、記者会見を開く予定になっています。

絶滅危惧を防ぐのは必要なことです。しかし、譲渡できないなどやむを得ない場合でも、猫の命を奪わずに済む方法があるなら、そちらを優先するべきなのかもしれません。

保健所などでの殺処分ゼロを目指す県や市が増える中、こうした対応は今後も大きく問題として取り上げられていくのではないでしょうか。

署名運動に協力したいかたは、下記URLよりウェブページをご覧ください。

【お詫びと訂正】2017年10月26日13時40分
本記事内の「環境省が計画した『ノネコの大量殺処分』」という表現に誤りがありました。訂正し、お詫び申し上げます。


[文・構成/grape編集部]

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