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「障害があってもいろんなことができるよ」紙芝居で伝えるパラリンピックの面白さ

By - ニッポン放送  作成:  更新:

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今では大相撲か歌舞伎でしか耳にできなくなった拍子木の音…。それが、子どもたちの遊ぶホールや広場に響きます。

昔なつかしい「紙芝居が始まるよ~」という知らせです。

しかし、ゲームの画面にクギ付けの顔を、なかなか上げてくれない子どもが多いといいます。株式会社「漫画家学会」の「渋谷画劇団」=映画の「画」に劇場の「劇」と書くこのグループは、プロの紙芝居師集団です。

様々な業界でプロとして活躍している多数のタレントさんが紙芝居師として所属。日本だけではなく、世界各地で紙芝居イベントを展開しています。

営業統括部部長の小林勝海さんは言います。

「私たちのライバルは、ゲームなんですよ!」

そのため、紙芝居を始めるまでの演出には余念がありません。10分前からの拍子木~紙芝居師の登場~前説~景品付きのクイズ大会!

ここまで来ると、子どもたちの間から大きな声や笑い声があがります。

「うちの子が、あんなに大きな声を出すなんて、知りませんでした」

と、目を細める親御さんも多いといいます。

株式会社「漫画家学会」は、元伊藤忠商事の商社マン、三木文夫さんの還暦を記念して2008年に設立。日本で唯一の京都精華大学マンガ学部の牧野圭一さんに「漫画家のための会社を作ってほしい」と言われたのがキッカケでした。

日本には、およそ3万人のプロの漫画家がいるそうです。このうち、漫画を生活の糧にできる人は、千人ほど…。

多くの埋もれている才能を発掘し、独自のネットワークを作りたい!

既存の出版社や新聞社に頼らない、新しい活躍の場を世界に求めたい!

こんな夢の実現のために生まれたのが、「渋谷画劇団」でした。紙芝居の描き手はもちろんのこと、紙芝居の読み手・演じ手として、声優、芸人、サラリーマン、プロレスラー、気象予報士、マジシャン~など様々な若い才能が集まってきたのです。

「かみはる」こと神前はるかさん

「ネオ紙芝居=新しい紙芝居」という旗のもとに結集した「渋谷画劇団」

そのメンバーの1人に、「かみはる」こと神前(かみまえ)はるかさん 27歳がいます。彼女は「渋谷画劇団」の山田一成(かずなり)さんが講師を務める紙芝居塾の1期生。

「紙芝居をさせると、すごい子がいるんですよ~」

こんな山田さんの推薦で、5年前「渋谷画劇団」のメンバーに加わりました。

「かみはる」さんは、千葉県船橋市出身。生まれつき右足の股関節に障害があり、杖を手放せない生活を続けています。杖を理由にいじめも受けました。

「障がい者であることが、恥ずかしかったんです。自分は社会に必要のない存在だと、死のうとも考えことがあります」

こんなふさぎ込んだ気持ちが一変したのは2年前。車いすバスケットボールで活躍する選手の姿にふれた時でした。

障害にめげず、車いすを自在に操って、勇敢に戦う姿が格好良く見えました。そして、「かみはる」さんは、こう思ったといいます。

『障害者に偏見を持っていたのは、自分自身だったのでは』

…と。このとき彼女は、ようやく自分のありのままを受け入れることができたのです。

2020年東京パラリンピックで卓球、バドミントン、車いすラグビーの会場になる渋谷区は、子どもたちに障害者スポーツをもっと知ってもらう取り組みを進めています。

その一つが、オリジナルの紙芝居をみてもらおうという作戦。そこで、「かみはる」さんの出番となりました。

渋谷区パラリンピックPR紙芝居 (株式会社漫画家学会HPより)

舞台上で2本の杖を操ってパフォーマンスを繰り広げる「かみはる」さん。

「ジャジャ~ン。今日はパラリンピックと障害のある人のお話をするね!」

「かみはる」さんと師匠の山田一成(かずなり)さんが始めた紙芝居には、義手や義足を着けた子どものイラストが描かれています。

「でもね、歩いたり、走ったり、スポーツができるようになるんだよ!」

と明るく元気に言い切った「かみはる」さんが次の瞬間、杖を使って体をスッと宙に浮かせると、子どもたちの歓声があがります。

渋谷区では本年度、60回の紙芝居公演を予定しており、「かみはる」さんは日々、足の痛みを抱えながら舞台に立っています。

「障害があってもいろんなことができるよって伝えたいんです」

杖を自分の魅力に変えて、パラリンピックの楽しさを広げてゆく…。これが「かみはる」さんの夢です。

2017年6月7日(水) 上柳昌彦 あさぼらけあけの語りびと より

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出典
障害があってもいろんなことができるよって伝えたいんです「あけの語りびと」(朗読公開)

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