娘に送迎を頼まれる父 文句を言いつつも楽しみにしていたのが、娘にバレて

※写真はイメージ

産経新聞大阪版、夕刊一面で毎日連載中。一般の方から寄せられた600字のエッセー『夕焼けエッセー』。

さまざまな年齢、職業の人々がつづった等身大のエッセーをご覧ください。

娘との通勤

 「お父さん、今日会社まで送ってくれん!?」と娘。私は「今日は、天気だから自転車で行けよ!」と返す。すると「だって持っていくものが多いから」と娘に押し切られ、車で送っていく。

 毎朝のように、こんなやりとりが繰り返される。妻は、ほほ笑みながら見ている。雨の日、手荷物が多い日など、娘の会社経由で通勤している。娘は今春、関西の大学を卒業し4月から地元の銀行に勤めている。

 私には、3人の子供がいる。長男、長女は数年前に大学を卒業し大阪で勤めていて、地元に帰ってきた娘は次女である。実は、次女は昨年の就活で都市銀行の内定が決まり、本人も都会地での仕事を楽しみにしていた。

 ところが、「誰か一人は島根に帰らないと!」ということできょうだい3人集まって相談していたらしい。3人の間でどんな話が交わされたかは教えてくれなかったが、結果、次女が帰ってくることになったのである。ひそかに地元の銀行の就活もしていたのだ。

 老夫婦2人で暮らしていくことを覚悟していただけに、娘の地元就職は正直うれしかった。また、私が暮らす島根県は、他の地方と同様毎年人口が激減している。そんななか、たった一人ではあるが、娘の帰省はわが島根県としてもうれしいことだ。

 娘の会社までは車で10分足らずだが、車内での娘とのたわいもない会話は楽しい。最近は、毎朝、私の方から「今日はどうやって行く?」と、一緒に車で通勤することを期待しつつ娘に聞くようにしている。

 娘の答えは決まってこうだ。「どうせ私と一緒に行きたいんでしょ!」。このささやかな幸せがいつまで続くかわからないが、私は、今日も娘と一緒に通勤する。

島根県 58歳

産経新聞 2017年10月20日 ーより

[提供/産経新聞 ・ 構成/grape編集部]

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