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学校に恥ずかしい格好でやってきた母を怒った日 あれから20年、今も母は

By - 産経新聞  作成:  更新:

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産経新聞大阪版、夕刊一面で毎日連載中。一般の方から寄せられた600字のエッセー『夕焼けエッセー』。

さまざまな年齢、職業の人々がつづった等身大のエッセーをご覧ください。

真っ赤なねんねこばんてん

小学5年生の時、クラブの発表会に母が昔ながらのばってんおんぶ紐(ひも)に10歳下の妹を背負い、真っ赤なねんねこばんてんを羽織ってやってきた。

母は妹を38歳で出産しており、歳の離れた妹がいるだけでもその当時は同級生から珍しいと思われていた。さらに、時代に似つかわしくないひときわ目立つ真っ赤なねんねこばんてんを羽織って学校に来たので、その姿がとても恥ずかしかった。

家に帰るなり私は母に「なんであんな格好で来るの!」と怒った。母は少し黙って「ごめんね」と謝った。その時の母の悲しそうな顔は今でもはっきりと覚えている。

あれから20年、1歳の息子を連れて実家に帰ると、母が物置部屋からいつの日か見た真っ赤なねんねこばんてんを引っ張り出してきた。ぐずる息子を慣れた手つきでおんぶして、少し色褪(あ)せた赤いねんねこばんてんを上から羽織り、近くのバス通りまで出かけていく。乗り物が大好きな息子に車やバスを見せに、帰省中は何度も散歩へ連れて行ってくれる。

「子供はおんぶが大好きなんやで〜。寒いときはねんねこ着たらどっちも暖かいしなあ〜♪」と陽気に話す母と、その背中で顔だけちょこんと出した息子の嬉しそうな姿を見て胸がきゅーっと苦しくなった。

妹は今年成人式を迎えた。

小さかった妹をおんぶして発表会にきてくれた母親の気持ちが20年経って初めて分かった。

お母さん、あのときはひどいこと言ってごめんね。

寒い中、おんぶして学校まで歩いて見に来てくれてありがとう。

兵庫県 30歳 

産経新聞 2018年01月15日 ーより

※ねんねこばんてん:
子どもを背負った上から着る事ができるはんてんのこと


[提供/産経新聞 ・ 構成/grape編集部]

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