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はしごしたい書店たち! 店主が勧める本が止まらない面白さ

By - メトロポリターナ  公開:  更新:

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荻窪は、本屋さんへ

古くから文化人が多く住み、暮らしやすい街として人気の荻窪。
老舗の古書店から、個人で営む新刊書店まで、さまざまな書店が並び、どの店も、親しみをこめて「本屋さん」と呼びたくなる温かさがある。
西荻窪まで足を延ばせば、さらにバラエティ豊かな本屋も堪能できる。
まだ冷えこむ2月は、あらゆる本屋をはしごして、お気に入りの一冊を手に入れよう。

「いか文庫」の聖地、荻窪

文: 「いか文庫 」店主

実は荻窪に10年くらい住んでいました。いか文庫の店主です。だから思い出もたくさんあります。安定したOLからアルバイト書店員に転職したのも荻窪にいた時だったし、大好きだった人にフラれたのも荻窪駅のホームだった。でもなによりも忘れられないのが、荻窪のブックカフェ「6次元」で、”いか文庫”が生まれた日のことです。

近所だったことがきっかけで通うようになった「6次元」のオーナーは、私が当時勤めていた本屋で書いた本のPOPを褒めてくれて、たくさんの人を紹介してくれました。どんどん友達が増えて、その子たちと雑談している時に「自分の本屋を開くとしたら、なんて名前にする?」と聞かれて思いついた店名が「いか文庫」でした。そのころ使っていた携帯ケースがイカの形だったからという理由と、語感がいいというだけで決めた名前です。それなのに妙にテンションがあがって、ロゴイラストを友人に依頼したり、ツイッターのアカウントを取ったり、着々と開店準備が整っていく、お店も商品もない「エア本屋」のいか文庫。そのツイッターに連絡してきてくれたのが、現在のいか文庫の相棒、バイトちゃんでした。「いか」という言葉につられて連絡をくれた”イカ好き”の彼女が、なんと同じ荻窪在住で、実は「6次元」でも何度もすれ違っていたということを知り、奇跡だ!と思いました。そして2012年3月、「6次元」で初対面を果たした当日、思わず「いか文庫に入りませんか?」と伝えていました。

最初は名前を決めただけだったいか文庫が、仲間を増やし、ロゴも決まり、「6次元」でお披露目イベントまで開きました。その後も「文禄堂荻窪店」で本を選ぶフェアをやったり、荻窪の公園で読書ピクニックをしたり、今まで味わったことのない楽しさを”荻窪”に与えられているということにジーンとして、ワクワクが止まらない日々でした。あの日から6年。私もバイトちゃんも荻窪から出てしまったけれど、今なお二人でいか文庫を続けています。それもまた奇跡だ!と、思わずにはいられません。

荻窪には、そんな新しい楽しさを与えてくれる「本にひたれる場所」がたくさんあります。だから、私にとって、いか文庫にとって、本好きな人にとって、荻窪は”聖地”だと思います。

いか文庫
本と本屋が好きな店主と、イカが大好きなバイトちゃんの2人で、日々どこかで開店しているエア本屋。
twitter→@ika_bunko

本だけじゃない! 荻窪の、心おどる3軒

本屋、とひと口にいっても、形態はさまざま。カフェがある店、イベントスペースをもつ店、ギャラリーで展示を行う店…本屋の枠にとらわれず人を集める、個性豊かな3軒を紹介!

一日中ひたれる、濃厚な読書空間
6次元

線路沿いにひっそりとあるブックカフェ。店内は、本に囲まれたソファスペースと、読書に集中できるカウンタースペースに分かれる。店内に並ぶ本は、すべて店主のナカムラ クニオさんによってセレクトされ、古書から新刊までのさまざまな本が並ぶ。料金はチャージ制(2000円)で、一度入れば好きなだけ読書の時間にひたることができる。

店の前を通るのは中央線。窓から行き交う電車を見るのも楽しい

器はどれもナカムラさんセレクトの骨董品。なかには弥生時代の土器も! 

珈琲はセルフサービス。ナッツなどの軽食をつまむこともできる

オリジナルのコースターは、活版印刷の嘉瑞工房で刷られたもの。活字好きにはたまらない活字の数々が使用されている。各100円

ナカムラさんに聞く6次元のこと

店主 ナカムラ クニオさん

お客さんも関われるブックカフェを目指して

6次元をつくろうと思ったきっかけは、旅先のパリでみた「シェイクスピア アンド カンパニー」という本屋なんです。四方を本に囲まれた魅力的な空間はもちろんですが、旅行客がふらっと行って泊まれたり、短期間だけ働けたり…という懐の広さが、当時衝撃的でした。そんなふうに、いろんな人が好きなように空間を使える、またそこで人と人が繋がれるような場所をつくりたいと思って、この店をはじめました。

当時は、展示ができるブックカフェ、くらいに考えていましたが、あれよあれよとイベントが増えていき、ついにはお客さん発案の読書会まで行うように…。つい最近では、いしいしんじさんと朝吹真理子さんとお茶を飲む会、というイベントをやりました(笑)。作者ともっと密にコミュニケーションを取れるイベントを増やしていくつもりです。

ナカムラさんオススメの2冊

南インド・チェンナイにある手づくり絵本の出版社「タラブックス」の秘密に迫った本。紙は手漉きのもの、印刷も手刷りで、製本も手作業…と、徹底した手仕事の様子から働き方まで、インタビューを交えながら紹介されている

『タラブックス』
著 : 野瀬 奈津子、松岡 宏大、矢萩 多聞
2200円 玄光社

チャイを飲む器などの民芸品や、レコードや車といった文化的なものを通じて、インドの人々の暮らしがよくわかる一冊。生活様式の解説とともに、インドの悠々とした風景が紹介されていて、インドへの旅に出かけたくなる

『持ち帰りたいインド』
著 : 松岡 宏大、野瀬 奈津子
1600円 誠文堂新光社

ROKUJIGEN
杉並区上荻1-10-3 2F
[営]19:00~22:00
[休]不定休
※イベント時は随時
ツイッターを確認
http://www.6jigen.com
twitter→@6jigen

なつかしいのに発見がある“本屋さん”
Title

JR荻窪駅から歩いて10分ほどの距離にある新刊書店。大きなガラス窓に青色のひさしが目を引く、シンプルな佇まい。店内奥には約8席ほどのカフェがあり、2階はギャラリースペースになっている。書架に並ぶ本は、すべて店主の辻山良雄さんによってセレクトされており、「生活」の本を中心に雑誌から文庫、ZINEまで幅広く並ぶ。

店内の書架や2階へ上る階段は、すべて木製で温かい雰囲気

カフェスペースでは、コーヒーやお酒、軽食が楽しめる。買ったばかりの本を、ここで読むのもいい 

2階のスペースでは、写真や絵画を中心に展示を行う。約1ヵ月ほどで内容が変わるので、お見逃しなく

辻山さんに聞くタイトルのこと

店主 辻山 良雄さん

本そのものの、変わらない魅力を伝えていく

この店をつくろうと思ったとき、自分が長い時間いられて居心地のいい場所、と考えて思い浮かんだのが、荻窪でした。荻窪は、古くから小説家や編集者、出版関係の人など、本に理解のある人が多く住む街で、店を出す前から、自分もよく足を運んでいました。

昨今、本は読まれなくなったとよく言われますが、もともと、読む人は読むし、読まない人は読まない、極端な世界だと思います。でも、必要な人にとっては、とても必要なもので、その人に深く関わる重要なもの。思っていたことを代弁してくれるような本だったり、新しい発見をくれるような本だったり…。ふとした時に、横にいてくれる存在として、これから先もあるものだと思います。

若い人だけではなく、子どもからご高齢の方まで気兼ねなく入れる、昔ながらの本屋のような場所にしたい、と思っています。

辻山さんオススメの2冊

ハンガリー出身の写真家、「アンドレ・ケルテス」が、ベッドの上で、本屋の前で…思い思いの場所で本を読む人々を切り取った写真集。その姿からは、“読む時間”を自由に謳歌する、好奇心に溢れた表情が垣間みえる

『読む時間』
著 : アンドレ・ケルテス
2200円 創元社

「考える本」「子どものための本」など、10ジャンルに分かれた365冊の本について、辻山さん自らの簡潔な言葉で紹介したブックガイド。新刊だけでなく、昔から読み継がれている名作もラインナップされ、読書欲をくすぐる

『365日のほん』
著 : 辻山 良雄
1400円 河出書房新社

TITLE
杉並区桃井1-5-2
03-6884-2894
[営]12:00~21:00
[休]水・第三火曜
http://www.title-books.com

新しい本屋のかたちを目指す
文禄堂 荻窪店

「文禄堂」は、都内を中心に書店を展開する「あゆみBOOKS」の系列店。荻窪店の特徴は、入り口にたたずむ3輪自動車「ブックルート」。約400冊の本を積載して、地域の祭りやイベントに出かけて移動販売を行っている。店頭に並ぶ“街の本屋”ならではの幅広いラインナップの書籍に加え、漫画好きな大人に喜ばれるような漫画のセレクトも好評。

ドアを取り去った開放的な入り口に、3輪の「ブックルート」がこの店のアイコン

「ブックルート」の荷台には、フェア中の商品がずらりと並ぶ。 写真は「リアル アニマル フェア」開催時のもの

テントのように設えた店内の一角では、文房具や雑貨を販売する。プレゼントを探すのも楽しい

前田さんに聞く文禄堂のこと

店長 前田隆之さん

この街にしっかりとなじむ、街の本屋に

この店は、2012年に「あゆみBOOKS」として荻窪にオープンし、2015年に今の屋号「文禄堂」としてリニューアルオープンしました。荻窪駅から近く、中規模の書店ということもあり、老若男女問わず幅広いお客さんが来店されます。そのため、文庫本や雑誌はもちろん、実用書や美術書など、できる限り様々なジャンルの本を手に取れるよう、心がけています。

2015年のリニューアルの際には、お客さんがもっと足を運びやすい店になるように意識しました。入り口の開口部を大きくとり、思いきってドアを取りはらうことで、開放的で入りやすいつくりにしています。

これからも、荻窪の魅力を吸収して、街に育てていただくことによって、ほかの地域の方々にも楽しめる品揃えができればと思っています。昔ながらの「街の本屋」でありながら、すこしずつ時代にあわせて変化していく、そんな本屋が目標です。

前田さんオススメの2冊

5篇の話からなるSFミステリー。怪獣惑星で起きた人気怪獣の密室殺人…事件の解決を頼まれたのは、宇宙探偵 ノーグレイ! と、ごちゃまぜな世界観に翻弄されながらも、どんどん物語に惹きこまれてしまう

『宇宙探偵 ノーグレイ』
著 : 田中 啓文
740円 河出文庫

小説家の角田光代と歌人である穂村弘が、それぞれ女性と男性の立場から、異性のことについて綴るエッセイ。「外見と内面」や「好意」についてなど、ひとつの同じテーマでも、すれ違いが生まれる瞬間を考察していく

『異性』
著 : 角田光代、穂村弘
530円 河出文庫

BUNROKUDO
杉並区荻窪5-30-6
福村産業ビル 1F
03-3392-2271
[営]月~土 9:00~25:00
日・祝 10:00~24:00
[休]無休
http://bunrokudo.jp

メトロと街のマガジン メトロポリターナ

メトロポリターナは毎月10日発行。東京メトロ駅構内の専用ラックで期間限定(10日間)で配布されている情報満載のフリーペーパーです。
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