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電車内、向かいの席にいるはずのない弟が!驚いてLINEを送ってみると…

By - 産経新聞  作成:  更新:

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産経新聞大阪版、夕刊一面で毎日連載中。一般の方から寄せられた600字のエッセー『夕焼けエッセー』。

さまざまな年齢、職業の人々がつづった等身大のエッセーをご覧ください。

ドッペルゲンガー

 ふと目覚めると、そこに弟がいた。朝の通勤ラッシュ。いるはずのない弟の姿に、脳が一気に覚醒する。「なんでいんの?」と言いかけてもう1人の自分が袖を引っ張る。ちょっと待って、もっとちゃんと確認して。

 弟は去年東京に就職した。今ごろ京葉線で、通勤ラッシュに揉まれているはずで、関西にいるわけがないのだ。しかし、本社は大阪にあるらしく、出張というのもありうるのだ。数日前に火鍋とタピオカミルクティーの写真で「飯テロ」LINEがきていた。中国出張から帰ってきたところだと言っていたが、営業マンというのは、そんなに頻繁に出張するものなのだろうか。

 視線を弟らしき人に戻す。切れ長の一重、スッと通った鼻筋、厚めの唇、身長の割に小さな手、極限まで噛んだらしい平べったい爪。寝ぼけて頭がおかしいのだろうか。とにかく似ている。とりあえず、LINEしてみなよ!ともう1人の自分。『もしかして今関西おる?』と送ると、すぐに既読がついた。

 『おらんわ』。すよね。ということは、あれが噂のドッペルゲンガーというやつか。

 電車がホームに滑り込む。席を立とうとすると、弟のドッペルゲンガーと目が合った。彼は体をひねり、道を開けてくれた。その背中が、弟より少し小さかった。いつも1つのいすに2人で座ってYouTubeの怖い動画を見ていた。怖いのは苦手なので大半は弟の背中を見ていた。あの背中ではなかった。

 その日はなんだか体が軽かった。自分のドッペルゲンガーを見ると死ぬと聞いたことがあるが、家族のドッペルゲンガーはどうやら元気をくれるらしい。

京都府 25歳

産経新聞 2018年06月11日 ーより

[提供/産経新聞 ・ 構成/grape編集部]

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