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娘に遅れて届いた約束の手紙 無駄になってしまったにもかかわらず母が笑った理由

By - 産経新聞  公開:  更新:

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産経新聞大阪版、夕刊一面で毎日連載中。一般の方から寄せられた600字のエッセー『夕焼けエッセー』。

さまざまな年齢、職業の人々がつづった等身大のエッセーをご覧ください。

しょうないなあの手紙

夕方のポストに郵便が一通届いていた。珊瑚色の小さな封筒には、娘宛に大きな字が並んでいる。送り主はMちゃんだった。Mちゃんは娘の小学校の友人で、今年の春から親元を離れ、東京の中学校に通っているのだ。

 Mちゃんからの手紙やで」。娘に手渡すと、突然の友からの便りに一瞬驚き、いそいそとうれしそうに封を切る。すると、手紙を読んだ娘が、笑いながら「これ、いつ送ったんやろう?遅いわぁ」と私にもってきた。

少し読ませてもらった内容はこうだった。「私が帰るのは5月2日です。3日から遊べますか?会ったらお互いの中学校の話をしようね」

今日は5月7日である。GW(ゴールデンウイーク)も終わり、学校が始まったからMちゃんも今は東京だろう。あらあら残念。封筒の消印は5月1日だった。大阪から東京まで中5日もかかっている。そうか、GW中で郵便局も休んでいたのだろう。

「しょうないなあ」。思わず娘と私はくすっと笑い合った。と同時にマイペースなMちゃんが「ごめーん」と、娘に言っていた顔が思い出されて可笑(おか)しかった。

そして、あの封筒と便箋は、彼女たちのもう1人の友人が、遠く離れるMちゃんに、これで手紙を書いて送って、と渡したものだそうだ。彼女にも同様の手紙が届いたらしい。

私は微笑(ほほえ)ましかった。すぐに「つながらない」スローな時間の流れの中に、彼女たちらしい確かな友情を感じとったからだ。

Mちゃん、今度は帰ったら電話してね!

大阪府 46歳

産経新聞 2018年07月05日 ーより

[提供/産経新聞 ・ 構成/grape編集部]

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