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父を亡くした姪を「何があっても守る」と決意した日 あれから数十年、叔母は再度決意した

By - 産経新聞  公開:  更新:

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※ 写真はイメージ

産経新聞大阪版、夕刊一面で毎日連載中。一般の方から寄せられた600字のエッセー『夕焼けエッセー』。

さまざまな年齢、職業の人々がつづった等身大のエッセーをご覧ください。

夕子をよろしく

姪の夕子が秋に結婚する。三十路に入っても焦る様子はなく、心配していた。王子様は突然現れたようだ。素敵な人らしい。

独り身の伯母を誰よりも気遣ってくれていた。入院のとき身元保証人を頼める有り難い存在だったことは、感謝してもしきれない。

これからは頼ってはいけない。お相手のご両親や実家の親を支えるだけで精一杯だろうから、伯母も姪離れしなければ--。

夕子が5歳の1月、父親は会社で倒れ、意識が戻らないまま亡くなった。病院の古い長椅子に2人の兄(小5、小4)と並んで座っていた。夕子は足が届かずぶらぶらさせている。

「何があっても、この子たちを守らねば」

誰に遠慮もなく力になれる。独り身であったことを幸いだとさえ思えた。

3カ月後、夕子は元気で1年生になった。夏休み、泊まりに来る夕子と電車を待っていた。すると突然、こんなことを聞かれた。

「お父さん、いつ帰ってくるん?」

言葉が出ない。5歳児の理解力を分かっていなかったのだ。かわいそうなことをした。

「そうやなあ、いつやろうねえ」

それが精一杯だった。胸の中では「何があっても守ってあげるよ」とまた叫んでいたが。

近ごろは守ってもらうばかりだった。

ありがとうね、夕子。義理の仲とはいえ、「おとうさん」と呼べる人ができてよかったね。

安心しました。

大阪府 78歳

産経新聞 2018年10月02日 ーより

[提供/産経新聞 ・ 構成/grape編集部]

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