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「ママ、目つぶって」 息子がなにかゴソゴソしている 目を開けてみると

By - 産経新聞  公開:  更新:

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産経新聞大阪版、夕刊一面で毎日連載中。一般の方から寄せられた600字のエッセー『夕焼けエッセー』。

さまざまな年齢、職業の人々がつづった等身大のエッセーをご覧ください。

誕生日

「ママ、目つぶって」。リビングに入ってくるなり、8歳の息子はそう言うと、何やら私の腕のあたりでゴソゴソしている。なんやろ…。そのとき、「あっ」。息子の声で私は目を開けた。

「せっかくプレゼントしようと思ったのにー」。くやしそうに言った。下を見るとプラスチックのビーズが散らばっている。私の腕に結ぼうとしていたけれど、うまく結べず床にザーっと落ちてしまった。

実は2日前、私の38歳の誕生日だった。とっくに忘れ去られていると思っていた誕生日。まさか手作りのブレスレットなんてもらえるとは…。

私は目に涙を浮かべて、いや浮かべるどころかほぼ号泣しながら床に落ちたビーズを2人でひろい集めた。今度は失敗しないようにと慎重に結んでいる息子の顔を見ているとなぜか、息子が小さい頃のことを思い出した。

初めての出産、子育て、熱をよく出してたな、離乳食ほとんど食べてくれなかったな。毎日が初めてのことで、楽しいというより不安や心配ばかりの毎日だったな…。

「ママ、お誕生日おめでとう」

もう一度結んでくれた息子の顔を見ると、私と同じ顔で泣いていた。

「覚えててくれたん、めっちゃうれしいわ。ありがとう」

そう言って私は息子を力いっぱい抱きしめた。

兵庫県 38歳

産経新聞 2018年10月23日 ーより

[提供/産経新聞 ・ 構成/grape編集部]

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