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彼女を連れて帰省する息子 ちゃぶ台しかない我が家で家族会議が始まった

By - 産経新聞  公開:  更新:

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産経新聞大阪版、夕刊一面で毎日連載中。一般の方から寄せられた600字のエッセー『夕焼けエッセー』。

さまざまな年齢、職業の人々がつづった等身大のエッセーをご覧ください。

ソファとちゃぶ台

「そんな訳で、よろしく頼む」。大阪にいる長男から今度の休みに帰るとの連絡。それもふたりで、とか。いつもとちがう様子に私は浮足だつが、同時に気がかりな事も。それはお客さまを招いても「どうぞ座って」とすすめる席がないこと。

わが家でもてなすとしたら玄関から入ってすぐのリビングダイニング。そう言うと聞こえはいいが、要するにさほど広くないスペースでテレビを見たりしてくつろぐのと食事の場所を兼ねているということだ。だからごはんもだんらんのひとときもコンパクトで移動が楽々の「ちゃぶ台」を家族で囲む。

とはいえ、普段使いの座布団ではなくあくまで「席」をすすめたい私の意向をくむ形で家具店へ探しに行く。皆の目にとまったのは1番小さなテーブルセットで「これがいいのでは」と候補に上がる。「じゃあ、どこら辺に置く? テレビの前?」と私。「テーブルの足元で寝転んでくつろぐのは変じゃないか?」と夫。「でもちゃぶ台の代わりならこれでしょ」と次男。

にわかに家族会議が始まり、それを店主が固唾をのんで見守る中「わたしはこれがいいな」と娘の一言。なりゆきを笑顔で聞いているお店のおばあちゃんと、並んでちゃっかり売り物のソファでくつろいでいる。その手があったと「ゲストシート」としてソファを買うことになった。

茶の間の主役の座はちゃぶ台が譲らなかったが、遠路はるばる訪ねてくれるという娘さんにソファをすすめるのが楽しみだ。

和歌山県 49歳

産経新聞 2018年11月19日 ーより

[提供/産経新聞 ・ 構成/grape編集部]

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