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“三社連合”の一角 三菱自動車の「虎の子」の技術

By - ニッポン放送  作成:  更新:

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「報道部畑中デスクの独り言」(第103回)では、ニッポン放送報道部畑中デスクが、ルノー・日産自動車・三菱自動車工業の「三社連合」について解説する。

取締役会が開かれた三菱自動車本社(東京・港区)

「アライアンスはこの20年間、他に例を見ない成功を収めてきました。アライアンス・パートナー各社は、引き続きアライアンスの取り組みに全力を注いでまいります」

日産自動車の前会長、カルロス・ゴーン容疑者の逮捕で、フランスのルノー・日産自動車・三菱自動車工業の「三社連合」の形が変わるのか…大きな焦点となっていますが、三社は声明で今後の提携関係を維持していくことを明らかにしました。

1階ショールーム 外国メディアを含め、TVカメラだけで十数台!(2018年11月26日撮影)

これに先立ち、日産、三菱自動車はそれぞれ臨時の取締役会を開き、ゴーン容疑者の会長職と代表権を解くことを決めました。このうち、三菱自動車の取締役会は先月26日に開かれ、終了後、三菱自動車の益子修CEOが記者団の取材に応じました。一階のショールームに取材スペースが急きょ設けられ、益子氏は無念そうな表情を見せながらも、“トレードマーク”の垂れた眉毛の角度は変わりませんでした。

益子氏は、ゴーン容疑者がすでに日産の会長を解任されたことで信任を失っていること、逮捕勾留の状況で任務の遂行が困難になっていること、逮捕によってレピュテーションリスク(会社の評価に対するリスク)が高まっていることを挙げました。その上で「三菱自動車の“正しい判断”として今回の提案を避けて通ることはできなかった。苦渋の決断だった」と述べました。穴の空いた会長ポストは次回の株主総会まで益子氏が暫定的に兼任するということです。

午後6時半過ぎ、益子修CEOが現れた

取締役会のメンバーはゴーン容疑者を除いた7名ですべて日本人、益子修CEOを除く6名は社外取締役です。三菱重工の宮永俊一社長、三菱商事の小林健会長の三菱グループの「重鎮」のほか、日産からも2名の役員がいました。取締役からは「丁寧に説明するように」とアドバイスされたと言います。今後の役員人事などで三菱グループが関与する可能性については、益子社長は明確に否定。あくまでも三社連合の中で決めていくことを強調しました。

ただ、三菱自動車と日産・ルノー連合との提携はゴーン容疑者の強い意向が働いたという経緯があります。いわば三社連合をつないで来た“橋渡し役”が消えることで、三菱自動車の今後の経営にも影響を与える可能性もあります。

記者団の質問に答える益子修CEO

三菱自動車の歴史をいま一度ひも解きます。自動車としての第一号は1917年、三菱造船が製造した「三菱A型乗用車」にさかのぼります。この点では100年以上の歴史を持つ日本最古の自動車メーカーなのですが、その後、三菱造船は三菱重工業に衣替え、その自動車部門として時を重ね、1970年に三菱自動車工業として独立します。つまり、三菱自動車としての歴史は国内主要メーカーのなかでは最も新しいということになります。

三菱自動車は当初、アメリカのクライスラーと関係を持ちます。クライスラーはその後、ドイツのダイムラーと合併してダイムラー・クライスラーに(後に提携解消)。三菱はそのダイムラー・クライスラーと提携を発展させます。ギャラン、ディアマンテ、ランサー・エボリューション、GTOなどのヒット車種を生み出しますが、21世紀に入って次々と発覚したリコール隠し事件で、ダイムラー・クライスラー側から経営支援を打ち切られます。

三菱グループの支援により経営危機を乗り切りますが、その後、燃費不正問題でまたもブランド力低下や信頼の失墜を招き、株価も下落。ゴーン容疑者は逆にこれを「買い時」と判断したのでしょう。「電光石火」のごとく、2016年5月に日産の傘下に入ることが発表され、ルノー・日産に三菱自動車を加えたアライアンス=三社連合が誕生します。日産の出資額は2,370億円、保有株式34%の筆頭株主となりました。

まさに波乱万丈の歴史を持つ三菱自動車ですが、ゴーン容疑者が三菱自動車に目をつけたのは、規模拡大によって世界最大の自動車グループにする“野望”があったのはもちろんですが、ルノー・日産を補完し得る要素があったのも理由です。1つは三菱自動車が強みを持つ東南アジアの市場、新興国の開拓には欠かせないものでした。そしてもう1つがEV(電気自動車)の技術です。

日産には「リーフ」というEVがあり、量産型EVとしては販売世界一と銘打っていますが、三菱自動車はリーフに先立ち、軽自動車の分野でEV「i-MiEV(アイミーブ)」の販売を始めた実績があります。何よりもEV戦略が思うような成果を挙げていない日産にとって、三菱自動車と組むことで、規模拡大による「スケール・メリット」を得て、EVの主導権を維持することにつながるわけです。

三菱アウトランダーPHEV G Limited Edition (GG3W) Author DJ5F-XDTB

さらに、注目したいのは三菱自動車にはPHEV(プラグインハイブリッドEV 車種は「アウトランダー」)の技術を持っていること。自動車の電動化技術には様々なものがありますが、いま市場でしのぎを削っているのは主にHV(ハイブリッド)、PHV(プラグインハイブリッド)、EVです。PHEVはこのすべてを集約していると言っても過言ではありません。ラーメンに例えればまさに「全部入り」。

燃料電池を使ったFCV(燃料電池車)を除けば、現状で最強のエコカーは走行時にガソリンを一切使用しないEVとなります。しかし、進化は続けているものの、航続距離や充電設備の少なさが難となっていて、扱いやすさの点でHVの優位性はまだまだ残っています。

しかるに三菱のPHEVは…

1.大容量のバッテリーだけで、つまりEVの状態で約65キロ走行可能(JC08モード フル充電時)。これは東京都心から成田空港ぐらいまでの距離に相当

2.バッテリーの電気が空になった場合はコンセントやエンジンから充電可能(エンジンは発電用途を主としますが、高速道路などエンジンの方が効率のいい領域は駆動用としても機能)

3.バッテリーは給電機能を持ち、専用の機器を使えば一般家庭で必要な電力を1日分供給できる(フル充電時)

4.1500W-100VのAC電源が装備され、ドライヤーやホットプレート、炊飯器なども使用可能

つまり、EVやHVの欠点をことごとくつぶしたものと言えます。ライバルにはトヨタ自動車の「プリウスPHV」がありますが、アウトランダーはこれに加えてモーターを2個使った4WD=四輪駆動の機能も持っています(プリウスはHVには4WDあり)。

益子CEOは「大きな会社と同じようなことをするのではなく、われわれができることをするのが大事」と述べていました。「三社の技術力の水準はバラバラ」「取締役のなかにはクルマの技術のわかるバックボーンを持った人がいないように思うが」…取締役会後の取材で記者からは厳しい質問が飛びましたが、電動化技術と4WD技術を高い次元で融合させた三菱自動車の技術は決して侮れないと思います。ゴーン容疑者がこの技術に食指を伸ばしたことは想像に難くありません。

三菱自動車もアライアンスの再構築を迫られるのか

三菱自動車はかつて、死亡事故につながる悪質なリコール隠しで「殺人行為」という厳しい批判も浴びせられました。その後も件の燃費不正問題で、「疑惑のデパート」のイメージは完全に払しょくされたとは言えません。一方で、電動化と4WDを融合させた上記の技術は「災害から命を守る技術」と言っていいでしょう。実際、これらの機能は一般のユーザーはもとより、防災関係者からも非常に高い評価を受けているのです。

三菱自動車にとって今回の事件は、言わば「隣の火事の火の粉」が飛んできた感じかもしれませんが、三社連合のなかで「虎の子」の技術をさらに磨いてほしい…自動車ファンの共通した思いではないかと思います。(了)

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出典
ニッポン放送“三社連合”の一角 三菱自動車の「虎の子」の技術

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