卵アレルギーを贅沢な病気といわれた女の子 すると、それを聞いた姉が… By - 産経新聞 作成:2019-01-21 更新:2019-01-21 夕焼けエッセー産経新聞 Share Tweet LINE ※ 写真はイメージ 産経新聞大阪版、夕刊一面で毎日連載中。一般の方から寄せられた600字のエッセー『夕焼けエッセー』。 さまざまな年齢、職業の人々がつづった等身大のエッセーをご覧ください。 私の特技 小学5年生の時の給食に卵料理が出てきたことがあった。私には卵アレルギーがあり、それまで当然のように卵の入った給食は残していたのだが、クラス替えをして間もなかったからか、担任は私の病気を把握していなかった。「残さずに食べなさい」と注意されたので「病気だから食べられない」と答えたが「卵が食べられない病気なんか聞いたことがない。ぜいたくな病気やな」と言われた。 そのひと言が胸に突き刺さり、私は教室を飛び出して6年生の姉の教室に行き、姉を見た途端、こらえきれず泣き出してしまった。姉のクラスの女子たちも心配そうに集まってきた。 「姉ちゃん、あのな、卵食べられへんのにな、先生がぜいたくな病気やっていうねん」。 しゃくりあげながら訴えた。姉はそれを聞くと「まかしとき!」と言って、集まってきた女子たちと一緒に私をクラスまで送ってくれた。そして担任をぐるりと取り囲むと、「妹、泣かさんといて。この子、病気やから食べられへんの」と真剣な表情と鋭い眼差しで言ってくれた。担任はたじたじとなり、私に謝ってくれた。強くて優しい姉は私の自慢だった。 その姉が6月に天国へと旅立ってしまった。辛い時はいつも姉に相談していたのに、姉はもういない。元気を出さなくちゃと思うけれど、いまだに深い悲しみが襲ってくる。 生前、「姉ちゃんみたいに強くなりたい」と姉に言ったとき「あんたの特技は助けてって言えることやで。それは私がなかなかできなかったことや」と言われたことを思い出した。姉ちゃんみたいに強くなりたい。でも、しばらくは私の特技を生かして、辛い時は誰かに助けてって言ってもいいかもしれない。 大阪府 47歳 産経新聞 2017年12月21日 ーより [提供/産経新聞 ・ 構成/grape編集部] Share Tweet LINE
産経新聞大阪版、夕刊一面で毎日連載中。一般の方から寄せられた600字のエッセー『夕焼けエッセー』。
さまざまな年齢、職業の人々がつづった等身大のエッセーをご覧ください。
[提供/産経新聞 ・ 構成/grape編集部]