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「震災の時、子ども部屋の扉を開けると…」 結婚式のスピーチで父が明かした、息子の行動とは

By - 産経新聞  公開:  更新:

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※ 写真はイメージ

産経新聞大阪版、夕刊一面で毎日連載中。一般の方から寄せられた600字のエッセー『夕焼けエッセー』。

さまざまな年齢、職業の人々がつづった等身大のエッセーをご覧ください。

おいっ子の電話

「もしもし、皆さんお変わりありませんか。おばあちゃんもお元気ですか」

1月2日、東京に住んでいるおいっ子からの恒例の電話である。

話し終わると、彼のやさしい笑顔が目に浮かんできた。遠く離れ、会う機会も少なくなったおいっ子ではあるが、輪郭を伴ったやさしい笑顔が浮かぶのは、彼についてこんな話を聞いたことがあるからであろう。

それは、10年ほど前、おいっ子の結婚式で、兄である彼の父親が披露した話である。当時、神戸市須磨区に住んでいた一家を、突然強烈な揺れが襲った。阪神淡路大震災である。強い揺れを感じながら、半壊した家の中を2人の子供の部屋へと急いだ父親が目にしたのは、妹の体に覆いかぶさる兄の姿であったという。

それはまさに、隣の部屋で寝ている3つ下の妹の命を守ろうとする兄の行動であった。震災後、その家には住めなくなったが、幸いにも家族4人は無事であった。

その結婚式で父親は「家庭教育は母親に任せっきりで負い目を感じていたが、そのときの行動に、兄としての、男としての成長を感じることができた。自慢できる息子です」と、両家代表のスピーチを閉じた。

「元気で、もっともっと長生きしてほしいと、おばあちゃんに伝えておいてくださいね」。施設に入っている98歳になる祖母のことを気遣う言葉で、おいっ子の電話は切れた。

兵庫県 66歳

産経新聞 2019年01月17日 ーより

[提供/産経新聞 ・ 構成/grape編集部]

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