grape [グレイプ]

「お婆さんが柿を売りつけに来た」断った人は、その後赤面することに

By - 産経新聞  作成:  更新:

Share Tweet LINE

※ 写真はイメージ

産経新聞大阪版、夕刊一面で毎日連載中。一般の方から寄せられた600字のエッセー『夕焼けエッセー』。

さまざまな年齢、職業の人々がつづった等身大のエッセーをご覧ください。

柿の里のおばあちゃん

11月初めのよく晴れた日、串柿の里として知られる和歌山県かつらぎ町へドライブをした。至る所に柿畑が広がり、たわわに実った柿が暖かな色で迎えてくれる。

今、正月用の串柿作りの最盛期である。柿の里の風景を楽しんだ帰り道、近くにある大きな楠(くすのき)を見に行く。楠の近くの空き地に車を停めていると横の民家から80歳位のおばあさんが出てきた。駐車料金を取りにきたと思い、声をかけると「いいですよ」と言いながら、にこやかに話しかけてくるが、とりあえず楠を見に行く。

確かに立派な楠である。車に戻ると、先ほどのおばあさんが来て、「柿はいりませんか」と声をかけてきた。駐車料金の代わりに柿を売り付けにきたと思い、「途中で買ってきました」と断ると、おばあさんは家の中に入り、ビニール袋一杯の柿を持ってきた。仕方なく「いくらですか」と聞くと「差し上げます」と言ってお金を受け取らず、ついに根負けして「ありがとうございます」と言って受け取ってしまった。帰路の車中、深い自己嫌悪に陥った。おばあさんの善意を汲み取れず、打算的なことばかり考えていた自分が恥ずかしくなってきた。

後日、どうしても気が済まず、再度、お菓子を持って会いに行く。おばあちゃんとご主人、娘さんの3人が出てこられた。先日のお礼を言うと「まだ柿がありますよ」と言われる。また、浅ましい気持ちが起こりそうになったが、グッと抑え込み、丁重にお礼を言い、暖かな柿の里を後にした。

大阪府 70歳

産経新聞 2017年12月21日 ーより

[提供/産経新聞 ・ 構成/grape編集部]

Share Tweet LINE

page
top