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13時間遅れで発車した電車 その時、老齢の男性が気付いた女性車掌の姿

By - 産経新聞  公開:  更新:

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※ 写真はイメージ

産経新聞大阪版、夕刊一面で毎日連載中。一般の方から寄せられた600字のエッセー『夕焼けエッセー』。

さまざまな年齢、職業の人々がつづった等身大のエッセーをご覧ください。

13時間10分遅れ

(2017年)10月22日、大型台風が日本に接近した日である。夕方私はJRで神戸から東の西宮に向かっていたが途中の住吉駅で動かなくなった。改札で状況を聞いたり、改札外に出てタクシーを探したりしてざわつくが、私はそのうち動き出すだろうと思っていたので居眠りをしていたら、11時を過ぎても動き出さない。諸事鈍い私も慌てだしたがどうしようもなく、駅中のコンビニに行くと食べ物の棚は既に空っぽで、飲み物を買って飲んだ後、最後尾の車両の座席に横になって寝ることに。

女性車掌が丁寧に状況を15分おきぐらいに放送してくれる。この車掌さんはずっと車掌室からわれわれ乗客の様子を見守ってくれている。昼の勤務の続きで疲れもあるだろうにと思っているうちに熟睡してしまった。

トイレのついでに他の乗客の様子を見ると、座席に寝転がっている男性、あぐらをかいて寝ている男性、女性客と同じように行儀良く寝ている男性と、さまざまな姿勢で夜を明かしている。騒ぐ人はいない。4時頃まで外はすごい嵐で車両が時々揺れるほどだ。

始発の時間になると、乗客がどっと乗り込んできた。車内で夜を明かした人たちはみるみる出勤客にのみ込まれて座席で眠そうな顔をしている。7時頃やっと動き出すときに女性車掌が車内放送で「この列車は昨日17時52分発の列車ですが、13時間10分遅れで発車します」と言う。この女性車掌、交代なしでまだ勤務するのか、と思って、降り際に「ご苦労さん」と一言声をかけた。嵐より、このときの女性車掌の顔が深く心に残った。

兵庫県 77歳 

産経新聞 2017年11月20日 ーより

[提供/産経新聞 ・ 構成/grape編集部]

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