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断られてしまった妻への2度目のプロポーズ 諦めるわけにはいかない

By - 産経新聞  公開:  更新:

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※写真はイメージ

産経新聞大阪版、夕刊一面で毎日連載中。一般の方から寄せられた600字のエッセー『夕焼けエッセー』。

さまざまな年齢、職業の人々がつづった等身大のエッセーをご覧ください。

3度目はアプローチから

妻の誕生日まであと半月。でもそこまでは無理らしい。

以前、「向こうでもまた結婚してほしい」と2度目のプロポーズをしたが「こんな苦労と病気ばかりの人生はもういやや」と振られてしまった。

病気で休学、姑で苦労、私の長期単身赴任、そしてこの病気。

亭主に懲りたのではない、この人生の続きが嫌なだけだと自分勝手に解釈したが、怖くて3度目は口にできないままだった。

チャーミングだった頬もヒップも痩せ細った妻は末期ガンの患者。

必ずしも逝くわけではないと思っていたが、数度の手術や厳しい副作用に耐えても再発転移を繰り返し、もう現実から目を背けてはいられなくなった。

38年間同じ道を歩んできたのに、この先は否応(いやおう)なく別々のバスに乗らねばならない。追いかけるから旅の続きを一緒にとの願いを口にしたが、いきなりプロポーズした強引さも裏目に出たのかもしれない。

でも諦めるわけにはいかない。最高の女性なのだ。

命の灯が消えかけた日、子供たちに提案した。

それぞれの願いや思いの手紙を書き、それを納めた65本のバラの花束を棺の母に抱かせ、少し早い誕生日を祝って送り出そうと。

子供たちは感謝の言葉が多かったようだ。

私は「大好きな君へ。初めて会った奈良公園で、あのときの笑顔で待っていて下さい。改めてデートからお願いします」と、ラブレターを書いた。

今度こそもっと大切にして必ず幸せにするために、許されるなら出会いからやり直したいからだ。

大阪府 69歳

産経新聞 2019年02月21日 ーより

[提供/産経新聞 ・ 構成/grape編集部]

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