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「間違って…」亡くなった叔母のメールを削除してしまった母 ある日、悲しむ母の携帯にメールが届く

By - 産経新聞  公開:  更新:

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産経新聞大阪版、夕刊一面で毎日連載中。一般の方から寄せられた600字のエッセー『夕焼けエッセー』。

さまざまな年齢、職業の人々がつづった等身大のエッセーをご覧ください。

天国からのメール

叔母が煙になるのを待つ休憩所までの距離は、わずか20メートル。そこまでの道のりを、腰の悪い母は私の手を握り、ゆっくりゆっくり歩く。

葬儀で涙を流したことのない私が、棺の中の叔母の顔を見た途端、無意識に涙が流れた。そこにいた初めて見る若者たちも、それぞれ涙を流している。いつも自分は後回しのやさしい叔母だった。

母から届いたメールの最後に、叔母からのメールを誤ってすべて消してしまったと書かれていた。さらに、携帯ショップに相談すると、再生できるというので行ったが、ガラケーはできないと言われショックとあった。

携帯ショップまで期待を胸に、つえをつき何時間もかけ一歩一歩がんばって行ったに違いない。しかし、その苦労はむなしい結果となり、帰り道はさらに長く、寒さは厳しく、悲しみは倍増したことだろう。母に電話をすると、想像通りひどく疲れ落ち込んでいた。

私は母に、叔母の長男に電話し、叔母の携帯に残っている母宛のメールを送信してもらうよう言った。

しばらくしてかかって来た電話は先ほどと打って変わり、明るく元気になっていた。お母さん、今の時代は天国からもメールは届くんだよ。

愛知県 59歳

産経新聞 2019年03月25日 ーより

[提供/産経新聞 ・ 構成/grape編集部]

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