grape [グレイプ]

単身赴任の夫がコンビニ弁当を、割り箸を使わずに家から持ってきた箸で食べる理由

By - 産経新聞  公開:  更新:

Share Tweet LINE コメント

産経新聞大阪版、夕刊一面で毎日連載中。一般の方から寄せられた600字のエッセー『夕焼けエッセー』。

さまざまな年齢、職業の人々がつづった等身大のエッセーをご覧ください。

コンビニ弁当

単身赴任中の私の昼食は、もっぱらコンビニ弁当だ。しかし、私はレジでお箸をもらわない。なぜなら、会社に箸を持参しているからだ。これは妻が持たせてくれた。味気ないコンビニ弁当でも、せめて箸だけでもちゃんとしたものを使って食べれば、おいしい食事をとっている感じがするのではと考えたからだ。そしてこの箸は、妻とおそろいだ。

ある日の昼休み、いつものようにコンビニ弁当を食べ終え、お茶をいれようと思い給湯室に入ると、後輩が何かを探していた。

「コンビニで、お箸をもらうのを忘れてしまって、割り箸か何かないかなと思いまして」。独身・独り暮らしの後輩もまた、昼食はコンビニ弁当だ。

「俺の箸使う? 今洗うから」。私は流しで箸を洗い、後輩に差し出した。「先輩、自分のお箸でコンビニ弁当を食べているのですか?」。驚く後輩に私は妻が持たせてくれた話をした。「優しい奥様ですね。では、遠慮せずにお借りします」。私の箸を使って弁当を食べている後輩を見ていると、妻が言うようにそれはコンビニではなく、手作りの弁当を食べているようで、とてもおいしそうに見えた。

数日後、後輩が私の席にきた。「先輩の“マイお箸”の話を彼女にしたら、彼女もすごく感動して、僕たちも買いました!」。後輩はカバンから箸箱を取りだして、うれしそうに私に見せた。「カバンの中で、お箸が“カラカラ”って鳴るでしょう。彼女がそばにいるようで、とっても幸せなんです」。後輩は箸箱を振りながら席に戻っていった。

私はこっそりと、机の下のカバンを振ってみた。「がんばれ!」。妻の声が聞こえた。

大阪府 43歳

産経新聞 2019年03月23日 ーより

[提供/産経新聞 ・ 構成/grape編集部]

Share Tweet LINE コメント

page
top