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妻「病人に餃子はないわ」 夫の予想外な反応に、考えさせられる

By - 産経新聞  公開:  更新:

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※写真はイメージ

産経新聞大阪版、夕刊一面で毎日連載中。一般の方から寄せられた600字のエッセー『夕焼けエッセー』。

さまざまな年齢、職業の人々がつづった等身大のエッセーをご覧ください。


ある日、友人と話していた50代の女性。

すると友人が「そういえばウチの嫁がこの間、具合の悪い息子に餃子を食べさせてたの」とグチをこぼし始めました。

「それはないわね!」と盛り上がったあと、帰ってから夫に報告すると、意外な反応が返ってきたのです。

愚妻の作る夕飯

友人が珍しく愚痴をこぼしてきた。先月結婚したばかりの息子さんがインフルエンザで寝込んでしまったが、お嫁さんがその時、買ってきた餃子を食卓の上にポンと置いて遊びに行ってしまったとのこと。食欲が落ちた病人に餃子はないと、話は大いに盛り上がった。

その晩、主人にその話をしてみた。興奮冷めやらない私と同じ意見かと思いきや、主人は冷静に「息子さんは餃子が好物なんじゃないか」とか「栄養をつけてあげようと考えたんじゃないか」などと、お嫁さんびいきな発言をする。ふん。オモシロクナイ。

それから数日後、主人が真っ赤な顔をして仕事から帰ってきた。午後から急に体調が悪くなり、勤務時間が終わる頃には熱も上がってきたそうだ。「大丈夫だよ。食欲はないけど、きちんと食事とって、早く寝るよ」

主人の言葉に、あっと驚く。今日のわが家の献立は餃子ならぬトンカツだ。急な発熱とはいえ、今日に限り冷蔵庫は空っぽ。買い置きもない。近くのスーパーも閉店している時間。普段はパン食のため、サッとおかゆも作れない。油ギトギトのトンカツが、ここぞと食卓で主張をしている。高熱の主人に「トンカツはお好きではないですかねぇ」「栄養をつけてもらおうと思ってねぇ」と、しどろもどろに聞いたことのあるセリフを繰り返す私。

もう、人様を悪く言うのはやめよう。人には事情があるものだ。新婚どころか二十年以上、よくこんな愚妻で我慢していただいている。真っ赤な顔でほほえむ主人とトンカツに、何か大きな物を気づかせてもらった。

大阪府 53歳

産経新聞 2018年03月16日 ーより

[提供/産経新聞 ・ 構成/grape編集部]

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