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米中首脳会談が遅れる米中それぞれの理由

By - ニッポン放送  公開:  更新:

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(4月19日放送)に外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。米中首脳会談のニュースを受け、今後の米中の行く先について解説した。

米中首脳会談、5月下旬以降に開催か

アメリカの新聞「ウォール・ストリート・ジャーナル」が17日、米中両政府が5月下旬か6月上旬に首脳会談を開くことを検討していると報じた。通商協議の合意を目指すもので会談実現に向け、4月下旬にも閣僚級の協議を再開するという。

飯田)この時期にやるという話もありませんでしたか?

宮家)つまり上手く行っていないのですよ。2018年から動いている話なのですけれど、アメリカにとってはいろいろな国と貿易交渉が日本を含めてありますが、最も優先順位が高いのは中国なのです。これは間違いない。ただし中国も足下を見ているとは言わないけれど、トランプさんは何をするか分からないし、大統領選挙が来年(2020年)あるわけでしょう。これに使われても嫌だし、あと2年くらい我慢したらトランプさんはいなくなるかもしれない。そうだったら譲歩なんてしなくていいではないか、ということでしょう。黒字だけ減らすのは簡単だけれど、共産党の指導も含め、保護主義や補助金はけしからんいってと、中国の政治経済システム自体を壊そうということは中国にとってとんでもない話です。

米中閣僚級貿易協議を前に撮影に応じるライトハイザー米通商代表部(USTR)代表(左)、中国の劉鶴副首相(中央)、ムニューシン米財務長官(右)(中国・北京)=2019年2月14日 写真提供:時事通信

首脳会談の日程が遅れる米中の背景

宮家)ライトハイザーさんはアメリカ的に言うと「頑張っている」のかもしれないけれど、ある記事を読んだら、あまり細かいことは大統領に上げないのだそうです。上げるとまたややこしい話になるから。そういう三つ巴の状況でやっているので、交渉が早く終わるわけ無いですよ。仮にできても一時的、限定的、表面的な合意でしかない。米中がきちんと世界経済をマネージ、コントロールできますよというメッセージをマーケットに送らないと、下手したら世界経済がおかしくなってしまいますからね。
しかし、こういうところでずるずる遅れているのを見ると、アメリカは相当厳しく中国に自主的な譲歩を求めている可能性が高くて、おそらくそれに中国が抵抗している。この間のハノイの米朝首脳会談のように、やると言っていて突然退場するようなことをされたら、中国は面子が丸つぶれですよね。アメリカまで行って、結局「成果無し」と言われたら何をしに行ったのだということにもなりかねない。そういう意味では中国側も慎重になっているのだと思います。

ワシントンで始まった米中の閣僚級貿易協議(アメリカ・ワシントン)=2019年2月21日 写真提供:時事通信

覇権を脅かす中国の存在と共産党一党を守りたい習近平氏

飯田)貿易面だけでなく、安全保障などでいろいろとアメリカが手を打っている感じがします。例えば青島で行われる国際観艦式にアメリカは出ないと言ってみたり、チャイナモバイルというIT企業がアメリカ国内で展開しようとしたらやめろと言ったり、いろいろなところでさや当てのようなことが起こっていますよね。

宮家)実質的に、これは経済制裁に近いものになって行くと思うのです。アメリカが中国に追いつかれてしまうのではないか、中国に代替されてしまうのではないか、そしてアメリカの主導力が陰って行くのではないかという恐怖心が、ここ数年のアメリカの対中政策を非常に厳しいものに変えています。それが始まったのはオバマ政権の末期ですから、別にトランプさんが始めたわけではない。アメリカの議会を含め、ビジネスの世界でも中国をもう昔ほど重視しなくなった人たちが多くなったのですが、逆に中国にとって本当はいい機会なのです。日本がやったみたいにきちんと国際化をし、自由化をし、規制緩和をして、内需拡大をやって、そして国有企業を改革してとやるべきなのに、全然やらない。こういうことをやっていたら中国は後で大変困るかもしれないという意識を持っている人も、中国に居ないわけではないのだけれど、習近平さんはそうではないらしいですね。

飯田)そういうことをやると、共産党の一党支配ができなくなる。

宮家)どちらが大事かと言えば、それは経済より、政治システムを守る方が大事だと思いますよ。

飯田)それがあるだけに、この先の経済がもう少し発展して行くと、中国は1つでいられなくなると言う人もいますけれど。

宮家)それはそうですね。ただ中国が分裂したときの方が、日本にとっては難しい国際環境になると思います。失礼な言い方だったら許して欲しいのだけれど、中国はやはり統一していて、強過ぎず弱すぎず、安定してくれるのがいちばん良いのであって、分裂して混乱が起きたら、日本を含めた周辺国に及ぼす悪影響は計り知れない。サイズが大きくて、13億も14憶もいるのだから。

飯田)それだけいるとなると。

宮家)難民が1%としても1千万人以上出る。

中国に潜む中所得国の罠はない?

飯田)一方で中国が強大になって、本当にアメリカと角を突き合わせて太平洋を二分するというところまで行くのかどうかというのも。

宮家)どうでしょうね。きょうの日経新聞に面白いコラムが載っていました。少し難しい話ですけれど、中国のミドルインカムトラップ、中所得国の罠があるのではないかと私は思っているのですが、そんなものは無いという論調なのですよね。もう1回読み直してみようと思っていますけれども。中国経済がどうなるかは、まさに中国共産党のシステムそのものに直結する大問題なのだけれども、中所得国の罠にはまらないとなったらそれはすごいですよ。中国の思い通りのことができてしまうとしたら、むしろ怖い。中国が変わる為には我々が通った道、韓国も台湾も皆通った道を中国も通らなくてはいけないなずなのだけれど、それを強権で止めてしまうとなったら大変なことになる、但しそのツケは更に大きくなると思いますね。

飯田)いままでは人件費が安くて、ガンガン作ればその分輸出してという経済だったのが。

宮家)それはもう無理ですね。

飯田)人件費が上がって来るとそれができなくなって、景気が悪くなってしまうのが中所得国の罠だと。

宮家)そう。だから内需拡大をして、イノベーションをやって、国営企業を改革して、規制緩和をやって、構造改革をやれば何とか1人当たりのGDPが1万ドルを超えて行くというのが経済学の常識なのだと思いますけれど、中国ではどうなりますかね。

飯田)人が多くいるだけに、それを強引に乗り越えられるのかどうかというところになるのでしょうか。

宮家)経済的に豊かになったら、本当は市民社会ができなくてはいけないのですけれど、そうでは無いみたいですね。

飯田)そこにはそれぞれの人たちの気質みたいなものもあるのかもしれませんね。

宮家)長い歴史もありますからね。

飯田浩司のOK! Cozy up!
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ニッポン放送米中首脳会談が遅れる米中それぞれの理由

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