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『無料診察券』をくれた、医者志望の小1男子 数年後の展開に胸が震える

By - 産経新聞  公開:  更新:

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※写真はイメージ

産経新聞で毎日連載中。一般の方から寄せられた600字のエッセー『朝晴れエッセー』。

さまざまな年齢、職業の人々がつづった等身大のエッセーをご覧ください。

看取り券

知人の息子がこの春、医師国家試験に合格し、研修医としてスタートを切る。ということでお祝いの食卓を共にした。

彼が医者を志したきっかけは、医者であった祖父の慈悲の治療にあった。診療時間外は自転車で往診に回り、貧しい人は無料で診察した。夜中でも依頼があれば診療所を開ける祖父は地元の老若男女から慕われていたそうだが、逆に彼の父親はその姿を見て会社員という仕事を選択したそうだ。

そんな彼がまだ小学校1年生の時、『むりょうしんさつけん』とかわいい字で書かれたチケットを5枚もらった。「僕が医者になった時には使ってね」との屈託のない笑顔の輝きは、立派な志となり見事に達成されたのだと思うと、思わず涙がこぼれ出る。

そのチケットを、彼に差し出すと「懐かしいなあ」としばし視線をチケットに落としていた。彼の脳裏には医者を志す原点であった祖父の笑顔が浮かんだのだろう。そのチケットを再び受け取る私に「持っていてくれてありがとう。一人前の医者になったら使ってよ」と恥ずかしそうに笑った。

その後日、彼から一通の封書が届いた。中には自筆で『看取り券』と書かれたチケットが入っており「生涯ちあきおばちゃんの健康は、僕にお任せ(笑)」との一文が添えられていた。「なんで、笑うんや」と思いつつ、優しい『死』を保障されたような歓喜の心があふれ出た。今世の最後を共にする彼の成長を見守りながら、立派に看取られるよう精いっぱい生きていこう。

大阪府 53歳

産経新聞 2019年04月25日 ーより

[提供/産経新聞 ・ 構成/grape編集部]

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