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靴下をよく編んでいた母親 通夜の日の出来事に、涙こぼれる

By - 産経新聞  公開:  更新:

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※写真はイメージ

産経新聞大阪版、夕刊一面で毎日連載中。一般の方から寄せられた600字のエッセー『夕焼けエッセー』。

さまざまな年齢、職業の人々がつづった等身大のエッセーをご覧ください。

毛糸の靴下

冬になると母が編んでくれた毛糸の靴下を履く。「あんたは、足が大きいから、みんなのより目数増してるよ」。そう言われて、貰った靴下は、確かにみんなのより大きい。母のこだわりで、渡す人によって、大きさを変えていた。

みんなの喜ぶ顔が見たくて、何足も編む。自分の身内はもちろん、近所の人や通っていた歯医者の受付の人にまで、頂いてもらう。

かかととつま先が破れるとモチーフをあてて修理までしてくれるので、私は、新しく編んでもらった分は箱にしまい、修理してもらった分を履き、さらにそれが破れてもまた修理してもらい、それを履く。新しい靴下は、私のコレクションのようにどんどん増えていった。

その母が、去年の三月に亡くなった。家には、編み貯めた靴下とプレゼント用の袋がきれいにしまってあった。お通夜の日、その袋に靴下を入れ、一人ずつ手渡した。

すると、皆、口をそろえて「私、何足も貰ったよ。修理もしてくれるし、お母ちゃんの靴下は、ほんまにあったかいよね。こうして貰えてうれしいわ」と喜んで頂けた。人を喜ばせることが好きだった母。きっと母も喜んでいるだろう。

この冬も相変わらず、修理してくれた靴下をはく。私があの世に逝くまでの靴下は確保できている。私があの世に逝ったときは、また母に、みんなより少し大きめの靴下を編んでもらおう。

大阪府 56歳

産経新聞 2018年03月27日 ーより

[提供/産経新聞 ・ 構成/grape編集部]

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