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母親の遺品にあった『給料袋』 書かれていたメッセージに、胸が震える

By - 産経新聞  公開:  更新:

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※写真はイメージ

産経新聞で毎日連載中。一般の方から寄せられた600字のエッセー『朝晴れエッセー』。

さまざまな年齢、職業の人々がつづった等身大のエッセーをご覧ください。

給料袋

母の一周忌までほとんど手をつけられなかった。やっと気持ちの整理がつき、実家で片付けをしていた。

押し入れから古い段ボール箱を引っ張り出す。私の兄弟が子供の頃使っていた野球のグローブやけん玉、ルービックキューブなど懐かしいものと一緒に妹が初めて勤めた会社の給料袋が出てきた。

そこには“今月もご苦労様でした これはあなたの貴い汗の結晶です 浪費をさけて、将来の発展を計画しましょう”と書かれていた。約40年前のものだが、なんとも思い入れのある言葉だ。

その頃妹がもらった給料袋の厚みは多分薄かったと思う。でもこの言葉を見て大事にしなければと内心救われたのではないだろうか。

現在、給料はほとんどの会社が銀行振り込みで事務の合理化や安全性という意味では理解しているが、若い頃、現金の入った給料袋を「ご苦労様」と頂いた身には少々味気なさを感じる。当時は上司の分厚い給料袋を見てあこがれと少しの嫉妬、そしていつか自分もと感じたものだ。

片付けが進むにつれて1枚きりの給料袋がどうして段ボール箱にあったのだろう、と考えた。たまたま? そうじゃないとしたら、私たち子に伝えるため…と思ったとき「そうやんか、やっとわかったの」と母に言われた気がしたので「はい」と小さく返事した。

大阪府 61歳

産経新聞 2019年05月09日 ーより

[提供/産経新聞 ・ 構成/grape編集部]

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