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チラシの裏にノートをとっていた男の子 それに気付いた教師の『行動』に、涙

By - 産経新聞  公開:  更新:

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※写真はイメージ

産経新聞で毎日連載中。一般の方から寄せられた600字のエッセー『朝晴れエッセー』。

さまざまな年齢、職業の人々がつづった等身大のエッセーをご覧ください。

あのときの「ノート」

長男の私は、家への仕送りが必要だった。中学2年のときには、すでに新聞専売所に下宿していた。給料を送金するときの、母の安堵する顔を思い浮かべることが、私の幸せだった。

生活のすべてに困窮していた。たった一つだけ満たされていたのは「紙」だった。新聞店には広告紙配達の依頼が絶え間なくある。これがうれしかった。広告紙裏面に白いものがあれば店主に頼み、いつも50枚ほどは分けてもらった。綴じてノートの代用品とし、全部の学科が広告紙の裏だった。紙質も鉛筆の滑りも悪く、でも贅沢を言うことはなかった。

2年生の7月、定期試験が終わってすぐに、体育の先生から全員に「ノート」の提出を求められた。広告紙の裏をノート代わりにしている私は思わず体が震えた。誰にも知られたくない貧しさの秘密だった。提出は恥のさらし者になる。何の名案もない。覚悟し職員室にそのノートを持参して、先生に一切の事情を打ち明けた。無言で聞いてくれた。悔しさと異常な羞恥心で涙したあの日。

後日、ノートの返却があった。私の「ノート」は新品のバインダーに綴じられて、3冊の真新しいノートが入れてあった。「整然としています」と採点記載があり、最後に「絶対に負けるな!」と力強い大きな文字が記されていた。その用紙は今も手元にある。

3冊のノートはあまりにも貴重で使用できず、一緒に人生を歩んできた。大切な宝物となった。生涯忘れられぬ先生との出会いがあった。

愛知県 74歳

産経新聞 2019年05月11日 ーより

[提供/産経新聞 ・ 構成/grape編集部]

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