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怒っておばあちゃんの手を噛む孫 帰りのバスがやってくると?

By - 産経新聞  公開:  更新:

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※写真はイメージ

産経新聞大阪版、夕刊一面で毎日連載中。一般の方から寄せられた600字のエッセー『夕焼けエッセー』。

さまざまな年齢、職業の人々がつづった等身大のエッセーをご覧ください。

てんてん怪獣

てんてん怪獣の武器は2本の前歯。怒った時にガブリと噛みつく。
おばあちゃんは、段々と強くなっていく武器の威力が頼もしくてたまらない。

アイタタ、アイタタ。少し角度のついた点々をうれしそうに見つめる。
てんてん怪獣も楽しくて、さっきよりもう少し強くかむ。
アイタタタ、アイタタタ。おばあちゃんは新しくついた点々を見て笑う。

てんてん怪獣は、おばあちゃんの笑顔が見たくてもう一度噛む。

アイタタタタ、アイタタタタ…。おばあちゃんの手の甲の赤紫色の点々が6個に増える。おばあちゃんは、その点々を愛おしそうに撫でる。

夕方、てんてん怪獣は、お母さんと駅みっつ分だけバスに乗ってパパの待つおうちに帰る。覚えたばかりの両手バイバイは全身でするのがてんてん怪獣流。出来るのが自慢なので何回もする。それがおばあちゃんにはさみしい合図。

母親に抱かれてバスに乗った3秒後には、てんてん怪獣の記憶から、おばあちゃんを噛んだことも、バイバイしたこともぶっ飛ぶ。

てんてん怪獣はバスが大好きだ。バスに乗るときのカードのピッの音が大好き。バスを降りる時のピンポンの赤い光を押すのも好きだ。

てんてん怪獣とお母さんが乗ったバスをおばあちゃんはずっと見送っている。バスが見えなくなるとおばあちゃんはてんてん怪獣を本当の名前でそっと呼ぶ。

「てんゆう、また おいでね」

そして、手の甲にうっすら残った武器の跡を泣きそうな気分でそっと包み込む。

大阪府 57歳

産経新聞 2018年04月14日 ーより

[提供/産経新聞 ・ 構成/grape編集部]

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