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「しまった!」秘密がバレた女性 恋が終わったと思い、彼氏の自宅に行くと?

By - 産経新聞  公開:  更新:

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※写真はイメージ

産経新聞大阪版、夕刊一面で毎日連載中。一般の方から寄せられた600字のエッセー『夕焼けエッセー』。

さまざまな年齢、職業の人々がつづった等身大のエッセーをご覧ください。

楽天的な肥料

私は片付けが苦手な母の元に生まれ、どんな話も右から左という父がいて、幾分、能天気な子供時代だったかもしれない。いやいや、振り返ると父や母の病気や事故、私も居眠り運転をしているドライバーに正面衝突をされて車は大破。今生きていることが実は奇跡なのだが、底を思い出す余地もない性分だ。

夫と付き合っていた頃のこと、私は夫を自宅へと招き入れた。すると、「これは何?」と、夫が訝しげにつぶやいた。し、しまった、と思ったときには時すでに遅し。

それは寝室の蛍光灯から畳すれすれまでだらしなく伸びている紐である。寝る前に読書をする習慣があった私は、心地良いまどろみを覚えた頃に立ち上がって電気を消すということを回避したい思いで蛍光灯の紐を継ぎ足したのだ。

一人暮らしの城では立派な「技」であっても、第三者から見るとズボラでしかないことは百も承知。この恋は終わったなと思った。

その後、夫の家に遊びに行くと、同じように蛍光灯の紐が継ぎ足されていた。立派で丈夫そうな紐の先は吊り輪になっていて、私の技をはるかに越えていたのだ。生活にはちょっとしたズボラが必要で、それは人生に不可欠な匠の技であると思った。時にはズボラの匠になることも、嫌なことを洗い流してくれて物事がうまく巡る秘訣なのかもしれない。

今でも蛍光灯から畳すれすれにダランと気持ち良さそうに伸びている紐を見るたびに、大切なことを教えられる。匠の技とさまざまな気づきは、父と母から与えられた楽天的な肥料のおかげに他ならないんだなあ。

愛媛県 43歳 

産経新聞 2018年03月23日 ーより

[提供/産経新聞 ・ 構成/grape編集部]

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