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怒鳴る父親が苦手で、距離をとっていた娘 他界してから4年後…

By - 産経新聞  公開:  更新:

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※ 写真はイメージ

産経新聞で毎日連載中。一般の方から寄せられた600字のエッセー『朝晴れエッセー』。

さまざまな年齢、職業の人々がつづった等身大のエッセーをご覧ください。

父の携帯電話

携帯電話の必要性を全く感じなかった私は4年前までは固定電話で用を済ませていた。しかし今私の衣服のポケットには必ず携帯電話がはいっている。風呂に入るときと寝るとき以外は文字通り携帯している。

散歩のときは万歩計として活躍する。散歩の途中で見た花や鳥、感動した風景などを写真に撮ることもある。たまに子供たちからメールが入る。しかし携帯は便利ではあるが私にとってなくてはならないものではない。それは私にとって「お守り」のようなものなのである。

4年前、父が他界したとき、形見として私は父の携帯を受け取った。87歳で亡くなった父は昔から新しい物が好きだった。発売されたばかりのカラーテレビやステレオなどが、私が幼いころには家にあった。父は携帯電話にも興味を持ったにちがいない。しかし実際にメールや電話で使われた記録はなく、私への連絡も固定電話からだった。写真も亡くなった母以外、撮られていなかったところをみると使いこなせていなかったのだろう。

機嫌が悪いことが多く大声で怒鳴る父を私は好きになれなかった。しかし街で車イスで立ち往生している人などを見ると、いの一番にかけつけて助ける父を私は尊敬していた。そんな父との接し方が私は最後までわからなかった。

不思議なことに亡き父の携帯電話を手にしてから、私は父との距離がとても近くなったような気がする。

広島県 60歳

産経新聞 2019年05月29日 ーより

[提供/産経新聞 ・ 構成/grape編集部]

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