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娘に『菜の花』にちなんだ名前をつけた女性 数年後…

By - 産経新聞  公開:  更新:

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※ 写真はイメージ

産経新聞で毎日連載中。一般の方から寄せられた600字のエッセー『朝晴れエッセー』。

さまざまな年齢、職業の人々がつづった等身大のエッセーをご覧ください。

イスラムネーム

三十数年前の4月初旬、第2子として娘を授かった。産室の窓外に広がる春景色を眺めながら名前を考えていると、黄色一面に広がる田舎の菜の花畑の風景が思い浮かんだ。

病室に来た夫に、「名前だけど“アヤナ”という名前はどう? “アヤ”は漢字の彩りの“アヤ”で、“ナ”はくさかんむりの」と言ったところで夫が言った。「ああ、菜っ葉の菜だね」。すかさず「違うよ。菜の花の菜だよ」とむきになって返した。「菜の花になるのか、菜っ葉になるのかどっちかな」と夫は破顔で言った。

就学前の娘は、外を裸足で駆け回るのが大好き、木登りが大好き。ブランコをこげばビュンビュン音をたて、天井までこぐのが大好きな女の子だった。

中学1年生時の男性担任が、初めて、名簿を一人ずつ確認した折、娘のところで「“すずき…さいさい”と読むのかな?」と言ったそうだ。大爆笑の中で娘は「中華料理みたいに呼ばないでよ」と不服に思ったと帰宅して話してくれた。娘には悪かったが、私も大笑いしてしまった。

時をへて、モロッコ人と結婚することになった娘はイスラム教徒となった。「イスラム教徒の女性の名前に“アヤナ”という名前があるそうよ」と弾む声で告げる娘。初めて自分の名前に感謝したかしら?

菜の花を見ては娘の名前にまつわる物語を思い出す。果たして乾いた大地で菜の花は育つのかしら?

埼玉県 64歳

産経新聞 2019年06月18日 ーより

[提供/産経新聞 ・ 構成/grape編集部]

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