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5年前に息子の病院で私を叱った小児科の先生 閉院の日、その優しさに涙

By - 産経新聞  公開:  更新:

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※ 写真はイメージ

産経新聞大阪版、夕刊一面で毎日連載中。一般の方から寄せられた600字のエッセー『夕焼けエッセー』。

さまざまな年齢、職業の人々がつづった等身大のエッセーをご覧ください。

小児科の先生

とうとうその日が来た。大阪に引っ越してから5年。通っていた小児科が閉院してしまうのだ。長男が生まれ、次男が生まれ、これまで大変お世話になった。

初めて長男を連れて行った日のことはよく覚えている。「お母さん、鼻水はいつから?え、わからない?最初の子でしょ。もっと早く連れてこないと!」

迫力のある声で怒られた。自分の父と同じくらいの齢だと思われる、ベテランの先生だった。

大阪に来て気づいたことがある。皆が大阪弁を話すわけではない。皆が話にオチをつけるわけではない。ただ、地元出身のママはおしゃべり上手だ。

「怖い?そう?いっつもあんな感じやで。もう慣れたわ。スピーディやし助かるわ」

そのママは、自身も小さい頃に通った経験があり、当然のように自分の子供も診てもらっている。対して別の土地から来たママの中には、文句を言う人もいた。「めっちゃ怖い。もう行きたくない」。賛否両論である。

働く先輩ママの一人息子は、生まれつき喘息持ち。物心ついたときからこちらの小児科通いだ。あるとき病状が悪化し、大きな病院へ入院することに。紹介状を書いてもらい、息子に付き添っていると、後に、先生自ら様子を見に来てくれた。その息子さんも今では大学生。喘息も良くなり、とても感謝している。

この道この地で35年。先生の小児科としての貢献は計り知れない。

4歳の長男と、この後田舎に行く予定だと言うと、「水薬より粉薬の方が長持ちするから」と気を使ってくれた。何げない出来事があふれてくる。

2歳の次男は、最後の予防接種の日、泣かなかった。

大阪府 42歳

産経新聞 2018年05月16日 ーより

[提供/産経新聞 ・ 構成/grape編集部]

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