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親の隣で眠ることになった18歳の青年 数年後、気付いたことは…

By - 産経新聞  公開:  更新:

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※ 写真はイメージ

産経新聞で毎日連載中。一般の方から寄せられた600字のエッセー『朝晴れエッセー』。

さまざまな年齢、職業の人々がつづった等身大のエッセーをご覧ください。

世代間の伝達

東北の寒村で育った私は、18で都会に出ると決めていた。明日出発という晩、ふと部屋にふとんがないことに気がついた。

「かあちゃん、おれのふとんどうした」と聞くと、「そごさある」と父母の部屋を指さした。「え!」とのぞき込むと、母の隣に私のふとんが敷かれていた。その晩私は母に背を向け、まんじりともせず一夜を過ごした。もちろん、親の気持ちなど考えることはなかった。

それから30年。東京に出た私の子供たちも高校生になった。すると「私(おれ)卒業後は家を出る」と宣言した。出発前の晩、平穏な日常ながら、初めてあのときの母の気持ち…寂しいが、子供を信じ見守ること…がわかった気がした。知人はみな、「居心地悪かったんだなあ」と笑った。そうだったかもしれない。

しかし私は、親の思いや生き方は世代を超えて子供に伝わっていく、と思い直した。私も家内も高校卒業後に家を出た。それを子供たちは知っていて、家を出る選択をしたのだろう。私は地位も富も得られなかったが、その地域で楽しく生きてきた。だから子供たちも、どこにいても私くらいの生活はできると、遠くから応援している。私の親がそうしてくれたように。

そんな中、遅ればせながら娘から結婚の電話がきた。「お母さんもモテなかったのか、遅かったな。『幸せになれたか』って? わからん。でも、君も同じくらいは幸せになれるよ」と応え、平凡な家庭の伝達を心から祈った。

東京都 65歳

産経新聞 2019年07月04日 ーより

[提供/産経新聞 ・ 構成/grape編集部]

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