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ツバメの巣を見つけた夫婦 数年後、独りになった妻に起きた『優しい出来事』

By - 産経新聞  公開:  更新:

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※ 写真はイメージ

産経新聞大阪版、夕刊一面で毎日連載中。一般の方から寄せられた600字のエッセー『夕焼けエッセー』。

さまざまな年齢、職業の人々がつづった等身大のエッセーをご覧ください。

ツバメ

梅雨晴に玄関を開け放して、外に出ていった。久しぶりに青空を見上げていると突然、鳥が吸い込まれるようにわが家へ入ってきました。余りの速さに何が起きたのかと思う瞬間、ツバメの声に気付き、家の中をそっと覗いてみると二羽のツバメが部屋の中を飛び廻っていました。そして、三、四回グルグルと廻ってそのまま外へ飛び立っていきました。

近年、ツバメの姿を見ることは全くなかったのに、このようなことは、後にも先にも一度きりで、それ以来、姿はもちろん声さえも聞いたことはありません。

十年近く前に、わが家の軒先にツバメが巣を作り子育てをしたのが最後だったと、記憶しています。というのも当時、ヘビがツバメの子を食べに来て、気付いた私が今は亡き夫と二人で、怖さを忘れて今まで見たこともない背中の模様のヘビと戦い、追い払ったことが思い出されます。あのときは、私たちが子供を守る親になっていたのでしょう。

今は田舎も、ほとんど家の建て替えが進んでツバメが巣を作る場所がなくなったのかもしれません。

でもわが家は、改装を繰り返しながら、築百三十七年になり、今私一人で住んでいるので、ツバメもよく知ってか、もう来なくなってしまいました。寂しい限りではありますが、独り善がりで、ツバメの子孫が二羽で、独り暮しの私に会いに来てくれたのではないかと思いながら、気を良くしている六月半ばです。

滋賀県 77歳

産経新聞 2018年07月26日 ーより

[提供/産経新聞 ・ 構成/grape編集部]

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