grape [グレイプ]

弁当を用意してくれた祖母 孫が中身に文句をいうと…翌日の展開に、ギョッ!

By - 産経新聞  公開:  更新:

Share Tweet LINE コメント

※ 写真はイメージ

産経新聞で毎日連載中。一般の方から寄せられた600字のエッセー『朝晴れエッセー』。

さまざまな年齢、職業の人々がつづった等身大のエッセーをご覧ください。

祖母の梅干

連日の猛暑で食欲が落ちた。妻が見かねて「梅干」を買ってきてくれたが、甘酸っぱくて旨いとはいえない。

箸をとめると、子供の頃食べた「祖母の漬けた梅干」が思い浮かんだ。

祖母は病弱であったが、寡黙で気骨ある大正女で、なにくれと私の面倒をみてくれた。

中学生の時、忙しい母に代わって祖母が弁当を詰めてくれた。弁当には決まって梅干が入っていた。祖母の漬けた梅干は、塩が吹き出ている辛い物だったが、白いご飯に合い、ついつい食べ過ぎてしまった。ご飯を何杯もおかわりし、毎日食べても飽きることはなかった。私は梅干が大好物になり、食事には欠かせないものとなった。

ある日、弁当を開けると、梅干が入っておらず、好みのおかずもなかった。祖母が入れるのを忘れたのである。

帰宅した私は、声高に祖母をなじったが、祖母は終始無言だった。祖母は怒って翌日は弁当を作ってくれないと思った。

だが、翌朝、卓袱台(ちゃぶだい)には弁当があった。

私は昼になり弁当を開け、周りがびっくりする程の声を上げた。なんと、ご飯の中が梅干だらけで、十数個も入っていた。無口な祖母らしい怒りの表現だった。

数年後、祖母は持病であるリウマチが悪化し、63歳で他界した。リウマチのこわばる手で弁当を作ってくれたことやさまざまな優しさに感謝の思いを伝えられなかったことを悔やんだ。

先日来、梅干を口にするたびに祖母が思い出され、思わず微笑んでしまう。

大阪府 65歳

産経新聞 2019年10月02日 ーより

[提供/産経新聞 ・ 構成/grape編集部]

Share Tweet LINE コメント

page
top