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わずか10年の間に何があった…? 画家の人生を変えた『出会い』に迫る 上野『ゴッホ展』

By - grape編集部  公開:  更新:

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19世紀後半の後期印象派を代表するオランダ人画家、フィンセント・ファン・ゴッホ。

『ひまわり』をはじめ多くの傑作を生みだした作家として有名ですね。

鮮やかな色彩と力強いタッチによる独特な表現は、見る者の心に訴えかけるものがあり、世界中の人を魅了し続けています。

上野の森美術館で『ゴッホ展』開催

ゴッホは生涯で油絵約860点、水彩画約150点、素描約1030点とたくさんの作品を制作しましたが、画家としての活動期間はわずか10年間あまりでした。

その短く濃密な生涯を、彼の画業に影響を与えた『ハーグ派』と『印象派』という2つの視点から追った『ゴッホ展』が上野の森美術館で、2019年10月11日より開催されています。

『ゴッホ展』ではゴッホの作品に加え、ハーグ派と印象派の画家たちの貴重な作品のほか、ゴッホが弟テオや友人たちへの手紙の中で語った言葉を交えながら、独自の表現を確立するまでの過程を展示。

その中から、ぜひ注目してほしい作品を中心に、初日に足を運んだ筆者の感想を交えて、紹介していきたいと思います!

最初は暗い色合いが多かった!?

ゴッホというと、有名な『ひまわり』のように鮮やかで、うねるようなタッチをイメージしませんか。

実は、画家になったばかりの頃は、落ち着いた色合いの絵を多く描いているのです。

フィンセント・ファン・ゴッホ 《疲れ果てて》 1881年9-10月 鉛筆・ペン・インク・筆・不透明水彩、簀の目紙 23.4×31.2cm  P. & N. デ・ブール財団 © P. & N. de Boer Foundation

掘る人、種まく人、鋤く人、男も女も、僕はどんどん描いていかなければならない。

他の画家たちがそうしてきているように、農民の暮らしのすべてを観察して描くよ。

1881年9月半ば 弟テオへの手紙より ゴッホ展図録 ーより引用

27歳で画家を志したゴッホは、オランダ南西部の都市・ハーグに移り住み、灰色派とも呼ばれる『ハーグ派』の影響を受けました。

この頃、農夫や労働者をモチーフにした暗い色合いの絵を数多く制作しています。

会場には、初期の代表作『ジャガイモを食べる人々』(リトグラフ)も展示。ゴッホ自身は油彩の出来栄えに自信を持っており、家族や友人に作品のリトグラフを制作して送ったのですが…残念ながら周囲の反応は散々だったそうです。

印象派に出会い、作風が変化

ゴッホが原色を用いた鮮やかな絵を描くようになったのは、『印象派』との出会いが大きく影響しています。

パリに移り住んだゴッホは印象派画家、アドルフ・モンティセリの作品に感銘を受け、鮮やかな色使いや厚塗りの筆致といった表現法を学びました。

また、ルノワールやクロード・モネ、カミーユ・ピサロといった印象派画家たちとも精力的に交流したといいます。こちらの『麦畑』は、そんなゴッホの表現の変化を感じられる作品の1つです。

フィンセント・ファン・ゴッホ 《麦畑》 1888年6月 油彩、カンヴァス 50×61cm P. & N. デ・ブール財団
© P. & N. de Boer Foundation

この1週間はずっと小麦畑の中にいて、太陽にさらされながらとにかく仕事をしたよ。

1888年6月21日 弟テオへの手紙より ゴッホ展図録 ーより引用

見渡す限りに広がる黄金色の小麦畑。ゴッホは麦畑を見て感じた強烈な印象を、そのまま描こうとしたのでしょうか。

作品を通してゴッホの感動が伝わってくるような気がしました。

晩年にたどり着いた『自分の表現』

ハーグ派、印象派画家と交流を重ねたゴッホですが、気難しい性格で周囲との衝突が絶えなかったそうです。

友人の画家、ゴーギャンとの関係が破綻した際は心身ともに傷付き、精神状態が悪化。ゴッホはサン=レミの精神療養院で療養生活を送りました。

本展のハイライトの1つである『糸杉』は、ゴッホの入院からまもなくして描かれました。ハーグ派にも印象派にも見られない独自の表現は、この頃に完成されたのかもしれません。

フィンセント・ファン・ゴッホ 《糸杉》 1889年6月 油彩、カンヴァス 93.4×74cm メトロポリタン美術館
Image copyright © The Metropolitan Museum of Art.
Image source: Art Resource, NY

そうだ、僕は絵に命を懸けた。そのために半ば正気でなくなっている。それも良いだろう。

1890年7月23日 弟テオへの手紙より ゴッホ展図録 ーより引用

黒と緑の色を使い独特のうねうねしたタッチで描かれた糸杉。昼間なのか、月がうっすら出ていますが空は明るく、どこか幻想的です。

燃え上がるような糸杉の描写からゴッホの芸術への強い情熱が伝わってきて、思わず息をのむほどの迫力です。ほかの来場者の人たちも、この絵の前に来ると圧倒されたように、しばらく足を止めて魅入っていました。

このほか、サン=レミ療養中に描かれた作品がいくつか展示されています。中でも「静物画でもっとも美しい作品の1つ」と称される『薔薇』も必見です!

そのほか、おすすめポイント

会場内は展示品全部をゆっくり観て、およそ1時間半ほどでまわることができました。

有料になりますが、女優の杉咲花さんがナレーションを務める『音声ガイド』サービスを利用することをおすすめします!作品についてより深く理解しながら、鑑賞することができますよ。

お土産コーナーをのぞくと、名作をモチーフにしたグッズやスヌーピーとのコラボ商品が売られていて、作品を見た後はつい欲しくなってしまいます!

ゴッホの魅力にすっかりハマってしまった筆者は、図録を購入。こちらの図録は『糸杉』『薔薇』の2種類の表紙から選ぶことができますよ。

ゴッホ展は2020年1月13日まで開催中です。名作を肌で感じる絶好の機会を、ぜひお見逃しなく!

『ゴッホ展』

【開催期間】2019年10月11日~2020年1月13日

【休館日】2019年12月31日、2020年1月1日

【場所】上野の森美術館

【開館時間】9:30~17:00(金曜、土曜は20:00まで開館)

【入場料(税込)】
《当日券》一般1800円、大学・専門学校・高校生1600円、中学・小学生1000円


[文・構成/grape編集部]

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