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認知症の母とオセロ 娘が思い出した『言葉』に、胸がじんわり

By - 産経新聞  公開:  更新:

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※ 写真はイメージ

産経新聞で毎日連載中。一般の方から寄せられた600字のエッセー『朝晴れエッセー』。

さまざまな年齢、職業の人々がつづった等身大のエッセーをご覧ください。

母の教え

母の言動に「もしや…」と、物忘れ外来へ連れて行ってから十数年。

母の認知症はゆっくりと、しかし確実に進行してきた。同じことを何度も繰り返し、財布をしまい込んだ場所を忘れて探し回ったり、洗濯機の使い方が分からなくなったり、あげればきりがない。

「あのしっかり者の母が…」と悲しくなる一方で、何度も同じ失敗を繰り返す母に、ついイライラしてしまう私。すると母もイライラし頑固になる。

そんなある日、母と行った近くの子供センターで『オセロ』を見つけた。なんと母と一緒にオセロで遊べたのだ。

早速おもちゃ屋で『オセロ』を買った。箱には「対象年齢6歳以上」とあった。それからは時間があれば母とオセロ盤を囲む。最初のうちは余裕で私の勝利。

「たまには負けてあげないと、母がやる気をなくすかも…」とわざと負けていた私だが、最近は母に3連敗なんてことも珍しくない。「強くなったねえ」のほめ言葉に母は、得意げなうれしそうな顔をする。できなくなってしまったことを嘆くより、まだできることを母と一緒に楽しみたいと思う。

昔、母に言われた言葉を思い出す。

「人は心に鏡を持っていて、その鏡に映ったように反応する。自分が優しくすれば優しい言葉が返ってくるし、とげとげしたら、相手もとげとげするんだよ。要は自分次第」

お母さん、今、あなたの言葉が身にしみます。ありがとう。そして長生きしてもっともっと一緒に楽しめることを見つけようね。

兵庫県 60歳

産経新聞 2019年11月12日 ーより

[提供/産経新聞 ・ 構成/grape編集部]

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