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南極という究極の環境で生きるコケの神秘

By - ニッポン放送  公開:  更新:

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毎日、さまざまなジャンルのプロフェッショナルをお迎えして、朝の活力になるお話をうかがっていく「あさナビ」。ナビゲーターは女優の黒木瞳さんです。

黒木瞳がパーソナリティを務める番組「あさナビ」(ニッポン放送)に、国立極地研究所・副所長であるコケの専門家、伊村智が出演。南極でコケの研究をする面白さについて語った。

南極観測隊の潜水観測で発見された「コケボウズ」。藻類やコケ類などの植物が円錐形に固まったもの=2010年1月22日午前11時53分、南極スカルブスネスの長池 写真提供:産経新聞社

黒木)今週のゲストは国立極地研究所・副所長で、コケの専門家の伊村智さんです。現在は南極で、コケを専門に研究なさっているのですか?

伊村)そうです。

黒木)どのような手段で、何を研究していらっしゃるのですか?

伊村)もともと私はコケの増え方に興味があったので、南極みたいに極寒で乾いていて、夏の期間が短く、1年の間で生育期間が短いという厳しい環境で、コケがどう増えているのかが興味の中心で始めました。乾いて荒れたところなので、コケが少ないのですよね。流れの際に少しだけ生えている程度でした。研究材料を見つけるのも厳しいところだったのですが、たまたま池のなかに、たくさんコケが生えているのに気が付いたのです。

黒木)池。

伊村)雪解け水が窪地に溜まっているのです。冬の間は凍ってしまうのですが、氷の厚さは最大で1.7メートル程度までしか張りません。その厚さの氷の下には、もし池が1.7メートルより深ければ、その下に必ず水があるではないですか。地上はカラカラですが、池の底だけ1年中水があるのです。そこにコケが生えている。コケばかりではなく、藻の仲間やバクテリアの仲間が池の底に住んでいて、そこで豊かな植生を作っている。その存在にたまたま気づくことができたので、以後はその池の底にあるコケの研究、生態系の研究を中心にやっていました。

黒木)だから魚がいないのですよね。

伊村)南極大陸全体で、魚は1匹もいません。動物というと、クマムシのような小さな虫や線虫など、原生生物しかいません。コケをかじる口を持った動物がまったくいないので、バクテリアとコケでエネルギーを循環させて、そこに少しだけ微小動物が住んでいる、という変わった生態系があるのですね。

黒木)でも、コケはどんどん増えるわけでしょう。伊村さんが命名されたコケボウズもたくさんあるのですか?

伊村)池の底にボコボコ生えています。

黒木)ボコボコ生えている。潜って見られたのですか?

伊村)最初に見つけたときは、ボートを出して「何だこれ」と言っていたのですが、やはり実物をこの目で見たかったので、ダイビングライセンスを取りました。

黒木)いかがでしたか、間近でご覧になって。

伊村)夢のようでしたね。せいぜい3~5メートルくらいの浅い池で、水面からキラキラと光が差し込むなか、湖底に座ると、自分と同じくらいの大きさのコケの塔が、ボコボコ周りに生えているのですよ。それが緑色で綺麗で、他に泳ぐ魚もいない。自分が南極という地の果ての池の底で、コケの塔に囲まれながらいる…夢のような世界です。

黒木)幻想的な風景でしょうね。コケボウズは増殖して行くのですね。

伊村)1個が最大で1メートル80センチくらいです。そこまで成長するのに1000年かかっていると思われていて、多分1000年単位で“成長しては倒れ”ということを繰り返しながら、池の底が波打っているのではないかと思います。

黒木)地球の神秘ですね。1000年単位で変わって行くことで、生態系のバランスが取れるということですか?

伊村)ギリギリの状態でバランスが取れているのだと思います。普通、生態系というのは生き物がたくさんいて、いろいろな種類が相互に関係を持ちながらネットワークを作るので、バランスが上手く取れるのです。南極の池では、本当に生き物が少ないのですよ。あの状態で維持されているということは、奇跡的だと思います。

黒木)そのような神秘を間近でご覧になって、夢のようだとおっしゃいましたけれど、写真などは撮られているのですか?

伊村)映像も含めて記録しています。基本的には役に立たないものなので、人に伝えて、わかってもらう。そして興味を持ってもらい、面白いなと感じてもらうことが大切だと思っています。

ニッポン放送「あさナビ」

伊村 智(いむら・さとし)/国立極地研究所・副所長

■1960年生まれ。栃木県宇都宮市出身。広島大学卒業。
■第36次越冬隊、42次夏隊、45次越冬隊、49次夏隊、イタリア隊、アメリカ隊に参加。第49次日本南極地域観測隊では総隊長(兼夏隊長)。
■北極、南極の陸上生物多様性と、繁殖生態に関する研究。
■南極湖沼中の大規模なコケ群落である「コケボウズ」をはじめ、蘚苔類を研究。

国立極地研究所とコケボウズ
■南極や北極などの極地で、物理学や生物学など様々観測・実験・総合研究を行う機関。
■伊村副所長は、「コケ」の研究者。南極のコケを調査するため何度も観測隊に参加。南極の湖の海底に、コケなどが円すい形になった「コケボウズ」を発見。コケボウズと命名したのも伊村さん。
■南極大陸は気温が低いだけなく、空気中の水分が凍ってしまうので、利用できる水分も少なく、日照サイクルも異常なため、植物の生育には向かない。また南極の湖のなかは栄養が極めて乏しく、大型動物や魚はまったく生息していない。プランクトンもほとんどいない。その湖で「コケボウズ」が発見された。
■コケボウズは50センチ伸びるのに約1000年かかり、大きいものでは高さ80センチにもなる。似た環境でも生息しない湖もあるなど、生体に謎も多い。南極の一部地域でしか見つかっておらず、世界的にも例のない独自の生態系。
■コケボウズを構成しているのは、主にナシゴケ属のコケ。

ENEOSプレゼンツ あさナビ(12月3日放送分より)
FM93AM1242 ニッポン放送 月-金 6:43-6:49

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出典
ニッポン放送南極という究極の環境で生きるコケの神秘

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