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【日本沈没 希望のひと 2話】 自分の間違いを見つめるということ・ネタバレあり

By - grape編集部  公開:  更新:

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Twitterやブログでドラマの感想をつづり人気を博している、あずきごはん(@komadorama)さんによる、新連載。

TBSで始まった2021年秋の新ドラマの見どころを、あずきごはんさん独自の視点でご紹介します。

立場のある人間は間違いを認めることが難しい。

自分の発言に影響力があることを自覚しているからこそ、簡単には曲げられないのだ。

しかし、間違いを認め、真実に目を向けることで初めて道が開けることもある。

1話から衝撃の展開で話題となった『日本沈没-希望のひと-』。

2話は田所博士(香川照之)の予言通り、伊豆半島沖の日之島が沈むところから始まる。

島の沈没を目撃した後も世良教授(國村隼)は意見を曲げず、日本政府は正式に関東沈没説を否定する旨を発表した。

そんな中、天海(小栗旬)の前に更なる壁が立ちふさがる。

「環境省に詐欺ビジネスを行う会社との癒着疑惑があり、その糸を引いていたのが天海だ」という旨の記事が出回ったのである。

記事は事実無根であったが、天海は謹慎処分を受け、日本未来推進会議のメンバーからも外されそうになる。

2話にして大ピンチだが、天海は簡単には折れない。記者の椎名(杏)に記事の出所を調べさせ、彼自身は関東沈没説の真実を調べていく。

『日本沈没』を見て2つの気になること

そんな天海の様子を見ていく中で、気になったことが2つある。

1つ目は、天海が人の言葉より自分の体験に従って行動していることだ。天海は田所博士を信頼している訳ではない。

むしろ付き合いが長く『権威』とまで呼ばれた世良教授の方が、彼にとって『信頼できる人間』であろう。にも関わらず関東沈没説にこだわるのは、彼自身が関東沈没の前触れを体験したからである。

「俺たちが向き合っているのは世良教授でも田所博士でもなくて、もっと大きな問題だ」

この台詞は、天海が関東沈没に直面しかねない官僚・国民の1人として、当事者意識を持って動いていることを示しているのではないだろうか。

2つ目は天海のやり口がかなり強引であるということだ。天海の強引さは1話から垣間見えていたが、2話では更に顕著になっているように思う。

まず謹慎中にも関わらず、東山総理大臣(仲村トオル)に直接会って提案書を渡すという賭けに出る。

結果、提案内容は総理のお眼鏡に叶い、会議のメンバーに残ることができた。つまり賭けは成功したと言える。

しかし半ば強引に提案書を押し付ける様は天海の「目的のためなら何でもする男」というイメージをより強くしたのではないだろうか。

さらに天海は記事にもなった癒着の真犯人に圧をかけ、調査に利用した。

田所博士から「会議で世良教授が提示した海底調査のデータは偽物だ」と聞いていた天海は、会議の議長である常盤(松山ケンイチ)に『正式なデータ』の入手を任せていた。

しかし常盤が持ってきたデータは会議で提示されたものと同じであった。

そこで天海は真犯人の人脈を利用。正式なデータとデータ偽装の痕跡を見つけることに成功した。

その過程で友人でもある常盤から「これ以上俺を巻き込むな。今のお前ちょっとおかしい」という言葉をぶつけられる。

天海がこのまま強引な手段を取り続けると敵が増えるのはもちろん、味方も離れていくのではないか。そんな不安が頭をよぎる。

しかし、天海が強引な手段を取って調査を続けることには理由があった。

関東沈没説では、政府の環境施策が沈没の原因の1つとして挙げられている。

天海はそのことで「自分たちが関東沈没に手を貸したのではないか」という罪の意識を感じていた。

自分たちが蒔いた種なら尚更、自分たちが責任を持って真実を追求しなければならない。しかし今の自分の立場でそれを通すためには、強引な手段を取らざるを得ない。

良かれと思って尽力した施策が驚異の元凶かもしれないなんて、普通なら逃げ出したくなるようなことだ。

そこで国民のために真実を追求できる天海はかっこいいと思う。そんな彼を理解し共に戦う仲間が、1人でも増えることを願ってしまう。

データの書き換えを指示していたのは…

そして天海は日本未来推進会議の場で、データの書き換えが行われていたこと、元データには関東沈没説の前触れがあったこと、書き換えを指示していたのが世良教授であることを明らかにする。

世良教授は「国民を不安に陥れないため、日本の信用のためには、『権威』である自分が関東沈没説を否定する必要があった」という旨を述べた。

関東沈没説という低い可能性のせいで、経済や外交に悪影響が及ぶのはナンセンスだという意見もあるだろう。しかし、最悪の可能性から目を背け何の対策も打たないままでは、ことが起こった時に多くの国民の命が失われる。

自分の発言が日本社会全体、ひいては世界から日本へのまなざしを変えてしまうこと。その恐ろしさは私のような一端の会社員には分からない。

それでも、「日本のため」を盾にして真実の追求を恐れる人よりも、真実に目を向けて自分の間違いを認められる人に未来を託したい。そんなことを考えさせられた。

日本沈没 希望の人/TBS系で毎週日曜・夜9時~放送


[文・構成/grape編集部]

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