1から学ぶ公的ローンと民間ローンの基礎知識
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住宅ローンについて調べたことがある人なら一度は「公的ローン」や「民間ローン」といった言葉を目にしたことがあるはずです。しかし字面からなんとなく意味は推測できても、それぞれの詳しい内容となるとうまく説明できない人も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、以下の点について重点的に解説をしています。
- 公的ローンと民間ローンの特徴やメリット、デメリット
- 自分にはどちらが合っているのかを知る方法
- 公的ローンと民間ローンを選ぶ時の注意点
などについて分かりやすく説明していきます。
この記事を読めば公的ローンと民間ローンの基礎知識が身につくだけでなく、自分にとってベストな住宅ローンの選び方が分かります。
公的ローンと民間ローンの特徴
住宅ローンは「公的ローン」と「民間ローン」に分けることができます。ここではそれぞれの概要を簡単に見ていきます。
公的ローン
国や自治体、あるいはその外郭団体といった公的機関が提供している住宅ローンを指します。代表的なところでは住宅金融支援機構が提供する「フラット35」がよく知られています。
公的ローンの特徴は審査の条件が民間ローンに比べてゆるやかな点です。また、提供元が営利を目的とする企業ではないため、金利の面でも利用者にとって有利な設定になっています。
ただし、人に対する審査条件はゆるい反面、物件に対しては独自の条件が設けられているのも公的ローンの特徴です。例えばフラット35では、床面積や耐火性、断熱性など住宅金融支援機構が設けたいくつかの基準をクリアしていなければローンを組むことができないしくみになっています。
民間ローン
民間の金融機関が提供する住宅ローンを指します。一言で金融機関といっても様々な種類があり、メガバンクをはじめネット銀行、信用金庫、労働金庫などがそれぞれ自社の特色を生かしたローンを用意しています。また、生命保険会社や住宅販売業者が金融機関と提携して提供しているケースもあります。
民間ローンの特徴は融資限度額が高く設定されている点です。公的ローンに比べてより多くのお金を借りることができますが、その分だけ審査は厳しく、年収や勤続年数などが基準を満たしていないと融資を断られてしまう可能性もあります。ただし、公的ローンのように物件に対して審査を行うことはありません。
公的ローンと民間ローンのおおまかな内容はお分かり頂けたでしょうか。次章では公的ローンの種類についてさらに詳しく解説します。
公的ローンの種類3つ
公的ローンには大きく分けて以下の3種類があります。
- フラット35
- 財形住宅融資
- 自治体融資
では、1つずつ解説していきます。
1.フラット35
住宅金融支援機構が提供するフラット35は、最長35年間金利が変わらないという全期間固定金利が特色の住宅ローンです。
住宅金融支援機構とは?
国民の住環境を向上させるために設立された独立行政法人で、国土交通省と財務省が管轄しています。2007年までは住宅金融公庫と呼ばれていました。
審査の基準は民間ローンよりゆるやかで、年収による制限がなく、団体信用生命保険(団信)への加入も任意です。
団体信用生命保険とは?
団体信用生命保険(略して団信)は生命保険の一種です。
住宅ローン返済中に契約者が死亡したり重度の障害を負ってしまったりした場合、保険金で残りのローンを完済することができます。
民間ローンを契約する際は必ず団信へ加入しなくてはいけませんが、公的ローンの場合は任意加入になっています。
また返済途中で民間ローンに借り換えをすることができたり、特に性能のいい物件に対してさらに金利を優遇するプランがあったりと様々なニーズにも対応しています。
なお、フラット35は住宅金融支援機構が民間の金融機関と提携して提供している住宅ローンのため、正確には「半公半民」と言えますが、ここでは分かりやすくするため公的ローンに含めています。
2.財形住宅融資
こちらも住宅金融支援機構が提供する公的ローンです。フラット35には職業上の制限(正規雇用か、フリーランスかなど)はありませんが、財形住宅融資は主に会社に勤務している正社員を対象にした住宅ローンです。
財形住宅融資では、勤務先を通して「財形貯蓄」を行っている場合に限り、住宅金融支援機構から住宅の購入・建築・リフォームのための資金を借りる事ができます。
財形貯蓄とは?
「勤労者財産形成促進法」という法律に基づいて実施されている福利厚生の1つです。財形貯蓄を導入している企業に勤めている場合に限り、任意で利用することができます。
財形貯蓄に加入すると、給料から一定額が天引きされて提携金融機関に送金され毎月積立られていきます。簡単に言うと会社に貯蓄を代行してもらう制度と言えます。
財形貯蓄には用途を指定しない「一般財形貯蓄」、老後の資金にあてるための「財形年金貯蓄」、住宅の取得に使うための「財形住宅貯蓄」の3種類があり、財形住宅融資を受けられるのは財形住宅貯蓄に加入している場合のみです。
なお、財形住宅融資を受けるには以下の3つの条件を満たす必要があります。
- 勤務している会社が財形貯蓄制度を導入していること
- 財形貯蓄を1年以上続けていること
- 財形貯蓄の残高が50万円以上あること
融資限度は財形貯蓄の残高の10倍(最高4,000万円)までで、金利タイプは5年ごとに金利が見直される固定金利期間選択です。借りられる金額は少ないものの、元本550万円までにかかる利子が非課税になるというメリットがあります。
3.自治体融資
自治体によっては、町おこしなどを目的として、独自の公的ローンを提供している場合があります。自治体が直接お金を貸すケースや、民間の金融機関と提携して利子分を補填するケースなどがあり、金利タイプや融資条件なども各自治体によって異なります。
以上が公的ローンの種類です。一方の民間ローンにはどのような種類があるのか、次章でくわしく解説していきます。
民間ローンの種類3つ
民間ローンには以下の3種類があります。
- 民間融資
- 提携融資
- 社内融資
では、1つずつ順に解説していきます。
1.民間融資
民間ローンと言えば一般的にこのタイプを指します。銀行、信用金庫、住宅ローン専門会社、保険会社といった民間企業が顧客に対して貸し出す住宅ローンです。
金利タイプはさまざまで、変動金利、期間選択型固定金利、全期間固定金利などの中から自分のニーズにあったものを選ぶことができます。また、企業同士の競争が激しいため、金利や手数料を引き下げるキャンペーンが盛んに行われている点も特徴です。
2.提携融資
住宅メーカーや不動産会社などが金融機関と提携して提供している民間ローンです。
自社の住宅を買ってもらうことが前提なので、融資の条件は一般的な民間ローンに比べてゆるやかなのが特徴です。また、銀行の窓口では通常案内されないお得な金利が設定されているケースもあります。
3.社内融資
福利厚生の一環として社員に対して独自に住宅ローンを提供している企業もあります。
自社の社員に対する貸付なので融資の審査はゆるやかですが、退職する時に借りたお金を一括返済しなくてはいけない点に注意が必要です。
以上が民間ローンの種類です。次章では公的ローンと民間ローンにはどんな違いがあるのか、それぞれのメリットとデメリットを挙げながら比較します。
公的ローンと民間ローンのメリット・デメリット
公的ローンと民間ローンにはどんな違いがあるのでしょうか。メリット・デメリットを比較しながら2つの違いについて解説します。
まずは公的ローンから見ていきましょう。
公的ローンのメリット
- 申込者本人に対する審査が比較的ゆるい
- 全期間固定金利プランを利用できる
では、2つのメリットをそれぞれ解説していきます。
⒈申込者本人に対する審査が比較的ゆるい
公的ローンは「人」に対する審査基準がゆるやかな点が利点です。年収や勤続年数、過去にどこでどれだけのお金を借りたかといった金融履歴は民間ローンほどは重視されません。
2.全期間固定金利プランを利用できる
非営利団体が提供している公的ローンは、利益ではなく利用者を第一に考えた金利プランを設定しています。その代表例がフラット35の全期間固定金利です。
長期間にわたって金利が変わらない全期間固定金利は、利用者にとっては金利がずっと変わらない安心感がある反面、貸す側にとっては利益率が悪くリスクも大きいため民間ではほとんど取り扱っていません。こうした利用者にとって有利なプランを選べるのも公的ローンのメリットです。
次に、公的ローンのデメリットを見ていきます。
公的ローンのデメリット
- 借りられる金額が比較的少ない
- 住宅の構造や居住地などに条件がある
では1つずつ見ていきましょう。
⒈借りられる金額が比較的少ない
それぞれの住宅ローンには申込者の年収や物件の価値などに関係なく設定されている「借入限度額」というものがあります。
この借入限度額の上限を比べてみると、一般的な民間ローンが1億円であるのに対し、公的ローンのフラット35では8,000万円、財形住宅融資では4,000万円になっています。
つまり8,000万円以上の借入したい場合、公的ローンは適さないことになります。都心の億ションや広い一軒家などを検討しているケースでこの限度額がネックになることがあります。
2.住宅の構造や居住地などに条件がある
公的ローンは申込者本人に対する審査がゆるやかな反面、フラット35のように物件に対する基準が厳しく設けられている場合があります。また自治体融資の場合はそもそもその市町村などに住んでいるか勤めている人しか利用することができません。
民間ローンでは年収や勤続年数が基準に満たないことを理由に契約を断られてしまうことがありますが、公的ローンでは別の基準からローンを組めないことがある点に注意が必要です。
以上が公的ローンのメリットとデメリットです。
次に、民間ローンについて見ていきましょう。
民間ローンのメリット
- 借入先や金利プランの選択肢が豊富
- 住宅ローンについて相談しやすい
まずはメリットを順に解説していきます。
⒈借入先や金利プランの選択肢が豊富
民間ローンは数多くの民間金融機関が取り扱っているため、公的ローンに比べてはるかに選択肢が多く、自分に合った借入先を選ぶことができるのが魅力です。
また、変動金利型や固定金利型、金利ミックス型など、金利プランも利用者のニーズに合わせて数多く用意されています。
さらに多くの企業が競合しているため、お得なキャンペーンも盛んに行われていて、各社が設定している条件に合致すればさらに金利が安くなるチャンスもあります。
⒉住宅ローンについて相談しやすい
支社数が多いメガバンクや大手保険会社の場合、いつでも気軽に窓口を訪ねて住宅ローンについて相談することができます。
一方、窓口を持たないネット銀行でも24時間メールで質問を受け付けていたり、電話やチャットで相談に乗ってくれるサービスを行っています。
また、公的ローンに比べてセミナーや相談会、個別面談会なども頻繁に行われていて、利用者に対するサービスが手厚いのも民間ローンの特徴です。
次にデメリットについて見ていきます。
民間ローンのデメリット
- 申込者本人に対する審査が厳しい
- 金利上昇のリスクを受けやすい
1つずつ解説していきましょう。
⒈申込者本人に対する審査が厳しい
民間ローン最大のデメリットは審査の厳しさです。
企業側は貸したお金が返ってこないリスクを最も恐れます。そのため住宅ローンを組む際に「この人にお金を貸して本当に大丈夫だろうか」という観点から厳しく審査されます。
特に重視されるのは年収、年齢、勤続年数や信用情報などで、いずれも変えることが難しい項目ばかりです。こうした基準を満たしていない場合、民間ローンの審査に通らないことがあります。
2.金利上昇のリスクを受けやすい
民間ローンでは変動金利や期間選択型固定金利をメインに取り扱っています。
こうした金利タイプの場合、契約当初の金利は比較的低く設定されていますが、その後に市場の金利が上昇すれば返済額が膨らんでしまうという大きなデメリットがあります。
また、契約した時点では完済までの総額が分からないため、返済計画が立てにくいという点にも注意が必要です。
以上が民間ローンのデメリットです。いずれも一長一短があり、どちらが向いているかは人それぞれであることが分かります。
次章では、公的ローンと民間ローンに申し込む際に前提となる基本条件を解説します。
公的ローンと民間ローンの申し込み条件4つ
住宅ローンを申し込む際には、まず以下の4つの基本的な条件を確認する必要があります。
- 選択可能な金利タイプ
- 借入可能な上限金額
- 申し込み時の上限年齢
- 団信への加入
では、公的ローンと民間ローンを比較しながらそれぞれの条件を見ていきましょう。
1.選択可能な金利タイプ
ローンのタイプ | 選択できる金利タイプ | 返済中のプラン変更 |
---|---|---|
公的ローン | 全期間固定(フラット35) 期間選択型固定金利(財形住宅融資) |
可 |
民間ローン | 変動金利 全期間固定金利 期間選択型固定金利 ミックス型 |
可 |
住宅ローン契約時には、まずどのような金利タイプでお金を借りるのか選ぶ必要があります。
公的ローンでは全期間固定金利と期間選択型固定金利しか選べないのに対し、民間ローンでは様々なタイプから自由に選ぶことができます。
なお、公的・民間いずれの場合もローンの借り換えをすれば返済中でも金利タイプを変更することができます。
2.借入可能な上限金額
ローンのタイプ | 上限金額 |
---|---|
公的ローン | 4,000万円(財形住宅融資) 8,000万円(フラット35) |
民間ローン | 最大1億円 |
いくらまで借りられるかの上限も、公的ローンと民間ローンの間で大きな差があります。特に財形住宅融資は4,000万円までしか借りられない点がネックです。
3.申し込み時の上限年齢
ローンのタイプ | 申込時の上限年齢 |
---|---|
公的ローン | 66歳(財形住宅融資) 70歳(フラット35) |
民間ローン | 65歳 |
一般的に、住宅ローンの返済は長期間に渡るため契約時には年齢制限が設けられています。
この中でフラット35は年齢が比較的高くても契約できる住宅ローンです。
4.団信への加入
ローンのタイプ | 団信の加入義務 |
---|---|
公的ローン | 任意 |
民間ローン | 必須 |
団信に加入していないと民間ローンを契約することはできません。
公的ローンの場合は任意となっていますが、加入する場合は住宅金融支援機構が用意する特約付きの生命保険を選ぶこともできます。
以上が申し込み段階の基本条件です。
次章では、審査に進んだ際はどんな点が重視されるのか、公的ローンと民間ローンそれぞれの審査基準について解説していきます。
公的ローンと民間ローンの審査基準4つ
公的ローンと民間ローン、どちらの場合も契約にあたっては事前に審査があります。
審査で主にチェックされるのは以下の4項目です。
- 勤続年数
- 年収
- 個人信用情報
- 物件の技術基準
それでは、公的ローンと民間ローンの審査で、この4項目の扱いがどのように違うのか比較していきます。
1.勤続年数
公的ローン | 規定なし |
---|---|
民間ローン | 2〜3年以上 |
現在の会社に何年勤務しているかという項目で、これによって将来的な収入の安定性や個人の信頼度を測ります。
公的ローンでは特に規定や制限はありませんが、民間ローンでは最低2〜3年は同じ会社に勤め続けていないと審査に通りません。
2.年収
公的ローン | 規定なし |
---|---|
民間ローン | 200〜400万円以上 |
民間ローンでは前年度にいくらの収入があったのかという点も重視されます。金融機関によって規定はまちまちですが、最低でも200万円以上の年収がないと審査には通らないと考えられます。
これに対して公的ローンでは年収に対する規定は特にないため、年収200万円以下であっても他の条件によっては審査に通る可能性があります。
3.個人信用情報
公的ローン | 民間ほど重視しない |
---|---|
民間ローン | 非常に重視する |
個人信用情報とはクレジットカードやローンの取引履歴のことを指します。
いつ、どこでカードを使ったか、どのようなローンを組んだか、支払いはきちんと行われたのかといった取引履歴は法律に基づいて保存され、指定信用情報機関という企業に登録されることになっています。各金融機関はこの個人信用情報をもとに「この人にお金を貸してもちゃんと返してくれるだろうか」という信用度を判断しています。
民間ローンの場合は特に個人信用情報を重視します。例えば「過去2年間に2回以上の返済延滞があると審査に落ちる」と言われています。
対して公的ローンでは「直近3ヶ月の間に返済延滞があると審査に落ちる」とされていて、若干基準がゆるやかになっています。
4.物件の技術基準
公的ローン | 審査あり |
---|---|
民間ローン | 審査なし |
物件の技術基準とは、床面積が十分に取られているか、耐久性や耐震性に問題はないか、断熱性に優れているかといった住宅そのもののスペックを示す基準です。
公的ローンのフラット35では独自の技術基準を設けていて、この基準を満たさない物件に対しては融資を受けることができません。また自治体融資の場合は地元産の木材を使っている家に限るなど、さらに独自の基準を設けている場合があります。
これに対して民間ローンでは技術基準に関する審査は行わず、代わりにその物件が担保としてどれくらいの価値があるかという点を重視します。
このように公的ローンと民間ローンでは重視する審査基準が大きく異なります。
公的ローンは人に対してはゆるく、物件に対して厳しい傾向にあり、民間ローンはその反対です。こうした違いを踏まえて、次章ではそれぞれのローンに向いているのはどんな人なのか解説していきます。
公的ローンがオススメなのはこんな人
住宅ローンで失敗しないために大切なのは、自分にあった契約内容を選ぶことです。
ここではまず、どんな人が公的ローンに適しているのかについて解説します。
公的ローンが向いている人
- 民間の住宅ローンを借りられない人
- 金利上昇の影響を受けたくない人
- 特別な金利優遇プランの条件に合致する人
それでは、3つのタイプを順に見ていきましょう。
1.民間の住宅ローンを借りられない人
民間ローンでは勤続年数や年収、年齢などが規定から外れていたり、フリーランスや自営業者であったりすると審査に落ちてしまうことがあります。また、持病や既往歴などから団信への加入を断られてしまった人も民間ローンを契約することができません。
上記のような理由から民間ローンの審査に通らないという人には公的ローンがオススメです。公的ローンは民間よりも審査基準がゆるやかで、団信への加入も必須ではありません。物件に対する審査基準をクリアしなくてはいけないという前提はありますが、民間ローンの審査で苦戦している人は検討する価値があります。
2.金利上昇の影響を受けたくない人
公的ローンであるフラット35は全期間固定金利と呼ばれるタイプの住宅ローンで、最長35年間、当初の金利が変わらないという特色を持っています。このタイプのローンは契約した時点で支払い総額が決まるため、将来の返済プランが立てやすいという利点があります。
何より、市場の金利が上昇しても利息が膨らまないという点がフラット35最大の強みです。「金利が上がったらどうしよう」と不安を感じながら長い返済期間を過ごすより、最後まで毎月の返済額が変わらない安心感を選びたいという人にはフラット35が特にオススメです。
ちなみに民間ローンにも全期間固定金利タイプはありますが、フラット35に比べて金利が割高なため、こちらはあまりオススメできません。
3.特別な金利優遇プランの条件に合致する人
フラット35の場合、特別な条件に当てはまった場合に金利を引き下げる優遇プランが用意されています。以下に代表的な例を紹介します。
フラット35S | 特に質の高い住宅を取得する場合、当初5年間の金利を0.25%引き下げる |
---|---|
子育て支援型 | 子供のいる世帯を対象に当初5年間の金利を0.25%引き下げる |
地域活性化型 | 提携している地方公共団体にUターンやIターンして住宅を取得する場合、当初5年間の金利を0.25%引き下げる |
条件はかなり限られますが、5年間年利が0.25%下がるのは大きな魅力です。当てはまっている場合は積極的に検討することをオススメします。
公的ローンが適している人は比較的限定されていますが、その分だけ条件が当てはまれば民間より有利な契約を結べるケースがあります。
次章では、もう一つの住宅ローン、民間ローンにはどんな人が適しているのか解説していきます。
民間ローンがオススメなのはこんな人
民間ローンに向いているのはどんな人なのでしょうか。ここでは3つの例を挙げて解説します。
民間ローンが向いている人
- 金利を低く抑えたい人
- 正社員かつ30〜40代の健康な人
- 狭小住宅や中古物件の取得を考えている人
それでは1つずつ見ていきましょう。
⒈金利を低く抑えたい人
民間ローンが取り扱う変動金利タイプの住宅ローンは、公的ローンに比べて金利が安いというメリットがあります。
例えば2019年5月時点の金利を比較すると、公的ローンのフラット35(35年固定タイプ)は1.290%であるのに対し、住信SBIネット銀行の変動金利タイプは0.447%と2倍以上のアドバンテージがあります。
金利が安い分だけ、住宅ローンの総支払額を低く抑えることができるのは大きな魅力です。そのため少しでも支払い額を少なくしたいと考える人には民間ローンがオススメです。
ただし、変動金利タイプには金利上昇時のリスクがあることを忘れてはいけません。もし契約後に金利が上がった場合、それに伴って返済額が増えてしまう点に注意が必要です。
⒉正社員かつ30〜40代の健康な人
民間ローンの審査が特に重視するのは「収入の安定性」「年齢」「健康状態」です。これらの項目に何らかの問題がある人は民間の住宅ローンを組むことができないため、おのずと選択肢は公的ローンに限られてしまいます。
しかし、正規雇用の会社員を数年以上続けている人で、30〜40代かつ健康状態に問題のない場合は民間ローンの審査に落ちる可能性はずっと低くなります。こうした人はあえて公的ローンを選ぶメリットは少ないと言えるでしょう。まずはプランの選択肢が豊富で窓口で相談もしやすい民間ローンから検討することをオススメします。
⒊狭小住宅や中古物件の取得を考えている人
公的ローンのフラット35では、購入(あるいは新築)予定の物件に対する技術的な審査があります。具体的には、戸建ての場合だと「70㎡以上の規模」や「断熱等性能等級⒉レベルの断熱構造」を持っている必要があり、マンションの場合は「管理規約が定められていること」や「20年以上の長期修繕計画がされていること」という条件が定められています。
こうした審査基準を満たせない物件の場合、フラット35では融資を受けることができません。そのため、規定の面積に満たないコンパクトな家を建てようと考えていたり、管理規約がはっきりしない古いマンションなどを購入する予定の場合は民間ローンから融資を受ける必要があります。
民間ローンは審査の厳しさがネックですが、その点をパスできれば選択肢が多く金利も安い優れた住宅ローンです。「自分は問題なく審査項目を満たしている」という方はまず民間ローンを視野に入れると良いでしょう。
次章では、住宅ローンを選ぶ時におさえておきたい大切なポイントを、公的・民間を問わず広い視点から考察していきます。
住宅ローン選びのポイントは「金利タイプとライフスタイル」
公的ローンと民間ローンのうち、どちらを選ぶのかは重要な問題です。しかしその他にも必ずおさえておかなくてはいけない住宅ローン選びのポイントがあります。
それは「金利タイプとライフスタイルが合っているか」という点です。
住宅ローンには大きく分けて変動金利タイプと固定金利タイプがあり、それぞれに以下のようなメリットとデメリットがあります。
変動金利 | 金利が低く総支払額が安くなるが、金利上昇のリスクがあり返済計画の見通しが立てにくい |
---|---|
固定金利 | 金利上昇のリスクを受けず安定した返済計画を立てられるが、元の金利が高いため総支払額が多くなる |
住宅ローンを選ぶ時は、どちらの金利タイプが自分に合っているのかを考えることが大切です。
例えば自分でこまめに市場金利の上昇率をチェックするのが苦ではない人や、多少のリスクがあっても総支払額を低く抑えて早めに完済してしまいたい人には変動金利が向いています。
反対に、毎月の返済額がずっと変わらないという安心感を重視する人や、自営業やフリーランスをしていて収入に波がある人には固定金利が向いています。
金利タイプ選びには年収額や年齢といった客観的な数値だけでなく、将来設計や人生観といった要素も重要な判断材料になります。住宅ローンを決める前には一度、家族でじっくり話し合い、将来のビジョンを見直す機会を作ることをオススメします。
最後に、次章では公的ローンと民間ローンに関する大事なポイントをまとめておさらいします。
まとめ
公的ローンと民間ローンについて、おさえておきたい重要なポイントをまとめました。
- 住宅ローンは公的ローンと民間ローンに分けられる
- 公的ローンは住宅金融支援機構のフラット35と財形住宅融資の他、自治体が独自に提供するものがある
- 民間ローンは銀行や信用金庫、保険会社、住宅販売業者などが提供する一般的な住宅ローンを指す
- 公的ローンは審査が甘いが、選べる金利タイプや物件のスペックに制限がある
- 民間ローンは審査が厳しいが、金利タイプの選択肢が豊富で物件の条件も問わない
公的ローンと民間ローンにはそれぞれ違った強みがあるため、自分がどちらに向いているのかを見極めることが重要です。
収入や金利といった数値だけで判断せず、将来どこに住んでどんな暮らしをしたいのか、老後は家族とどうやって過ごすのかといった人生設計まで含めて検討することがベストな選択をするためのコツです。