【『大奥 Season2』感想1話】鈴木杏と村雨辰剛が描き出す小さな理想郷
公開: 更新:
大倉忠義「何かが間違っている」 飲食店に嘆きコメント、同情の声アイドルグループ『SUPER EIGHT(スーパーエイト)』の大倉忠義さんが、2024年11月15日にXを更新。焼き鳥店に行きづらい、嘆きの投稿に同情の声が集まりました。
切り干し大根で4品作る! 豊富なレパートリーに、なるほど!ギャル曽根が教える切り干し大根のアレンジレシピ。パスタの代わりにするナポリタンとは?
grape [グレイプ] entertainment
SNSを中心に注目ドラマの感想を独自の視点でつづり人気を博している、かな(@kanadorama)さん。
2023年10月スタートのテレビドラマ『大奥 Season2』(NHK)の見どころを連載していきます。
かなさんがこれまでに書いたコラムは、こちらから読めます。
NHKドラマ10『大奥』の原作、よしながふみのコミックにおいて医療編が始まる単行本(八巻)が刊行されたのは2012年。
その年、日本では東日本大震災の傷跡がまだ生々しく、一方ロンドンでオリンピックが開催されて開会式では女王がスパイとともに空を飛ぶ映像が流れ、年末には第二次安倍内閣が成立している。
深い傷跡と未来からぼんやりと差し込む光。それらの境界線にあったようなその年、世界を覆いつくす疫病の影はまだどこにもなかった。
どこまでも架空の出来事として、自分含め読者は原作に出てくる業病『赤面疱瘡』のことを捉えていた。
それから十年も待たず、私たちは優れた作家の筆がまるで予言のように薬のない疫病と人々の混乱を正確に描き出していたと知ることになる。
※写真はイメージ
江戸時代、三代将軍家光の時代。男子のみが罹患する伝染病により、男子の人口が女子の四分の一にまで減ったこの国で労働と政治の担い手は女性となった。
将軍もまた女性が務める中で、女将軍が跡継ぎを生むための大奥は男ばかりが集められるようになるが、男女が逆転したとしても、いや逆転しているからこそ、そこには悲哀が満ちているのだった。
シーズン1で、原作のエッセンスを余すことなく表現した緻密な脚本と、圧倒的な映像美、俳優陣の熱演で好評を博したNHKドラマ10『大奥』。
シーズン2は八代将軍吉宗(冨永愛)の死からおよそ20年、いわゆる田沼時代と呼ばれる時代から始まる。
吉宗から赤面疱瘡の撲滅を託された将軍の側用人・田沼意次(松下奈緒)は、大奥での医学研究のために平賀源内(鈴木杏)に命じて長崎・出島で蘭学者を探させる。
源内がこれと見込んで連れてきたのは、長崎で外国人と遊女の間に生まれた金髪碧眼の吾作(村雨辰剛)という名の青年だった。
その容姿で差別を受け続け、苦難の多い半生にもかかわらず、吾作は「人の役に立ちたい」と大奥に入り、新たに『青沼』という名で蘭学の講義を始める。
※写真はイメージ
医療編と呼ばれるこのパートは、男女逆転の大奥の物語の中でもやや異質な光を放っている。
ここで描き出されるのは、男女の役割が逆転した世界ではなく、男女の役割の境界線そのものがない世界である。
いや、武家の身分を捨てた平賀源内が連れてきた金髪碧眼の青沼の講義に、御半下から将軍、御台所まで集う。
性別だけではなく人種・身分の境界線も越えようとする、それは小さなユートピアである。
医療編の要ともいうべき、女でありながら男装し、せわしくなく喋り、美女に目がない陽気な平賀源内を鈴木杏が演じる。
源内はよしながふみ作品の魅力を凝縮したような、原作でも屈指の人気キャラである。
果たして誰が演じられるのか、演じるとしたら男女どちらになるのかとファンの気をもませた妖精のような人物を、鈴木杏は見事に体現した。
会話に常に被せ気味の早口と、好奇心溢れる身振りがたまらなくチャーミングだ。
そして、鈴木杏が同じくNHKドラマ『今ここにある危機とぼくの好感度について』(2021年)で演じた研究者・木嶋みのりと同じように、その目の奥には揺るがぬ知性と反骨が息づいている。
源内に連れられて大奥に参じる蘭学者を演じるのは、2021年度放送のNHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』で進駐軍の将校を好演した村雨辰剛。
2022年放送のNHKドラマ『わげもん ~長崎通訳異聞~』にも出演し、今やNHK作品の外国人役として地歩を固めつつある村雨だが、やはり純粋で透明感のある青年を演じると一際輝く。
二人を軸に、松下奈緒、玉置玲央、趙珉和といった実力派が脇を固める。
※写真はイメージ
さらに原作でもファンを震撼させた一橋治済を演じる仲間由紀恵の存在感は、初回はわずかな出演ながら格別のものがあった。
ドラマで、原作にない部分で一つ印象に残った部分がある。
それは、源内と青沼がそれぞれ共鳴しあう「他者にありがとうと言われたくて生きている」という二人の動機である。
このくだりは原作ではずっと後に源内の言葉として出てくるが、ドラマでは医療編の冒頭で二人の願いとして語られる。
さらに御半下の風熱(インフルエンザ)を看護する黒木と青沼との会話でも、他人に感謝されたいという願いは浅ましいのかという問いかけが描かれる。
シーズン1で繰り返し描かれたのは、尊厳を剥ぎ取られるような境遇にありながらも、人が懸命に生きる姿の崇高さだった。
シーズン2の医療編では、人を獣ではなく人たらしめるもの、人間の利他や博愛について、更にクローズアップして描かれるのだろう。
再び観る者の心を揺さぶる二ヶ月あまりが始まる。じっくりと腰を据えて向き合いたい。
SNSを中心に注目ドラマの感想を独自の視点でつづり人気を博している、かな(@kanadorama)さん。
2023年10月スタートのテレビドラマ『大奥 Season2』(NHK)の見どころを連載していきます。
かなさんがこれまでに書いたコラムは、こちらから読めます。