【考察】鈴木亮平・永瀬廉が表現する複雑な人物の機微 『リブート』第3話
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SNSを中心に注目ドラマの感想を独自の視点でつづり人気を博している、かな(@kanadorama)さん。
2026年1月スタートのテレビドラマ『リブート』(TBS系)の見どころを連載していきます。以下、ネタバレが含まれます。
かなさんがこれまでに書いたコラムは、こちらから読めます。
このドラマでは、ちょっとしたシーンの会話が魚の小骨のようにひっかかる。
気のせいかもしれないと思いつつも、何かのはずみで思い出してひっかかる。
そういったシーンのひとつが、第一話の冒頭、本来の儀堂歩(鈴木亮平)がシャモ小屋で幸後一香(戸田恵梨香)相手に忌々しそうに言い放った「料理、出来ないの知ってるでしょう」だ。
儀堂のシャモ小屋での一香への態度はいかにも粗野で下品に見えた。
だが、いかにも悪徳刑事らしい人物像が、今回、儀堂の妻の登場で変わった。
夫婦仲は冷めきっていて離婚寸前という情報とは裏腹に、妻の儀堂麻友(黒木メイサ)は愛情深く儀堂を心配しているように見える。
さらにダメ押しは、ひっそりと貼られた儀堂のロッカーの中の写真だった。
すぐにでも離婚したいと思っている妻の写真を、きわめてプライベートなその空間に、わざわざ貼るだろうか。
料理をしない男が選んで結婚した妻・儀堂麻友の職業は小学校に勤める栄養士だという。
ここにも、食に関する符号が隠されている。
もちろんパティシエが主人公なのだから当然だが、このドラマは初回からずっと何かを食べる・食べさせるということを執拗に描いている。
登場人物の食へのスタンスは、彼らそれぞれの他人への愛情のあり方を表現しているように思えてならない。
だとしたら、裏社会の金を自在に操る合六亘(北村有起哉)の配下たちへのそれは、食肉用の家畜に手間暇をかけて『その時』まで良質の飼料を与えるようなものなのかもしれない。
そんなことをちょっと考えて薄ら寒くなった。
2年半行方不明になっていた妻が白骨遺体で発見された日を境に、善良なパティシエ・早瀬陸の人生は暗転した。
妻・夏海(山口紗弥加)と担当の刑事・儀堂二人を殺害した冤罪の疑いを晴らすため、早瀬は顔を整形して儀堂になりすますことになる。
上手く儀堂になりすましたものの、それを提案してきた会計士・幸後一香とともに、儀堂=早瀬は、裏社会の巨額の金銭にまつわるトラブルに巻き込まれてしまう。
今回、早くも儀堂(=早瀬)と一香は、消えた十億円にたどり着く。十億を隠し持っていたのは、リブート前の儀堂だった。
だが、なぜ儀堂が命の危険を顧みずに十億もの大金を得ようとしたのかは未だに不明だ。
そしてもう一つ、個人的に腑に落ちないと感じた点がある。
それは十億円とともに保管されていた早瀬夏海の運転免許証だ。
ドラマの初回、白骨遺体の身元特定の手がかりになったのは現場近くで見つかった夏海のパスケースだった。
その遺体が実際に夏海かどうかは別として、遺体を早瀬夏海だと方向付けたいのなら、免許証を改めて回収して隠匿する必要はないように思われる。
免許証を回収して隠した細心さと、パスケースを現場に放置した雑さが微妙に矛盾しているように思えてならない。
とにもかくにも、重箱の隅が気になって仕方ない罪なドラマである。
さらに今回、夏海とゴーシックスとの最初の接点は冬橋航(永瀬廉)だったことが明らかになる。
思い返せば、初回、夏海の葬儀にやってきた冬橋は何かの感情を押し殺していたように見える。
改めて見てみると分かるが、合六の下で暴力の実行部隊として働くときの虚無そのものの無表情とは違う、柔らかな憂いがある。
一方、弁護士の海江田(酒向芳)と相対するときには、無表情に見えてその視線には侮蔑が滲んでいたし、夏海の殺害をめぐって儀堂(=早瀬)と話すときには微かな戸惑いが見えた。
表情のない男を演じながら、永瀬廉はいくつかの感情をほのかに浮かび上がらせて、視聴者に巧みに感じ取らせている。
思えば、夏海の葬儀に向かう車内で、冬橋は海江田にこう言い放っていた。
「年の離れた子に手を出してると、人生棒に振りますよ」
棒にふるどころか、結局それが決め手になって海江田の人生そのものが終わったわけで、そのロングパスに改めて鳥肌がたった。
ロッカーにひっそりと貼られた儀堂夫婦の写真もまた、早瀬がペンダントにしている結婚指輪のようなものだったかもしれない。
悪徳刑事として生きていた儀堂歩が、大切な何かを守りぬくための最後の砦として、それを見るたびに心がくじけそうな自分を奮い立たせていたのではないか。
本来の儀堂歩はどんな男だったのか、何を得ようとしていたのかを無性に知りたいと思う。
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[文/かな 構成/grape編集部]