【考察】クリーニングに出したままの冬物 この会話が意味するのは…『田鎖ブラザーズ』第9話
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かな
SNSを中心に、注目ドラマの感想を独自の視点でつづり人気を博している。
NHKの朝ドラ、大河ドラマを中心に、幅広く視聴。
『TOKYO MER』『最愛』『19番目のカルテ』『ちょっとだけエスパー』などのレビューを執筆。
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SNSを中心に注目ドラマの感想を独自の視点でつづり人気を博している、かな(@kanadorama)さん。
2026年4月スタートのテレビドラマ『田鎖ブラザーズ』(TBS系)の見どころを連載していきます。以下、ネタバレが含まれます。
かなさんがこれまでに書いたコラムは、こちらから読めます。
『田鎖ブラザーズ』(TBS系)ほど長い時間と熱量をかけて、犯罪被害者のその後を描いたクライムサスペンスはないと思う。
主軸の殺人事件そのものが時効となって、法律上の解決がぽっかりと消えてしまったことが、その描写に更に深みを与えている。
最終話直前の9話を見ながら、犯罪被害者とその家族にとって『事件の決着』というものが存在しうるのか、存在するとしたら一体どんなものなのかを考え込んでしまった。
兄の田鎖真(岡田将生)は神奈川県警青委署の強行犯係の刑事。
面倒くさがりだが、コミュニケーション能力が高く、いざという時の判断は的確だ。
弟の田鎖稔(染谷将太)は神奈川県警の検視官。有能で何度も表彰されているが、人付き合いが苦手で出世には興味がない。
兄弟は幼い頃に両親を殺害されており、事件は公訴時効にかかって既に迷宮入りしている。
しかし事件から31年経っても、2人は諦めることなく両親を殺した犯人を捜し続けていた。
そして事件を取材していたジャーナリストの死をきっかけに、事件の真相が明らかになる。
両親を殺害したのは、事件後に兄弟を支えてきた家族同然のもっちゃんこと茂木(山中崇)だった。
前回は茂木の死という衝撃的なシーンで終わっていたが、それが自死であること、そして茂木自身が覚悟を決めて準備をしていたことが明らかになる。
今回印象深かったのは、もっちゃんのチャーハンをめぐる兄弟のそれぞれの表情だった。
家族同然だった茂木が実行犯だった事実に深く傷つきながらも、稔は茂木のレシピを見てチャーハンを作り、真は泣きながらそれを食べる。
レシピを残すという行為は、やはり罪悪感を越えた愛情以外の何ものでもないと思う。
真実を知った兄弟から憎まれることを覚悟した上で、レシピを書きのこした茂木の複雑な心中をはかることは難しい。
ただ、茂木にとっては、店をたたむ、きちんと母の行く先を決める、誰にも迷惑がかからない場所で最期を迎える。
そういった行為の延長線上に兄弟のためのチャーハンのレシピがあった。それは確かなことだろう。
そして、これまで真と宮藤(中条あやみ)が関わってきた現代の事件は、31年前の事件と要素が重なっているが、大学受験の採点ミス隠蔽事件での母親を守る為に事件に巻き込まれる息子の姿は、31年前の茂木に重なっていたのだなと改めて思った。
最終話にむけて、まだ明かされていないことがある。
一つは小池(岸谷五朗)と当時の同僚、笹岡(柳憂怜)の事件への関わりだ。
なぜ事件が迷宮入りしてしまったのか、そこにどんな介入があったのか。
二つめは、足利晴子(井川遥)がどう過去の事件に関わっているのかだ。
今回、31年前に朔太郎(和田正人)が密造拳銃を暴力団に引き渡さなかったことで、取引現場を手引きした漁師が殺されたという事実が明らかになっている。
もしその漁師が晴子の父親であるならば、田鎖朔太郎が原因で晴子の父は死んだとも解釈できてしまう。
晴子は何を思い、隠し続けているのか、兄弟の前から消えた数年間の理由は何なのか。
そして、やはり最も気がかりなのは真と稔が交わしていた、クリーニングに出したままの冬物の衣類の会話だ。
「放っておけばいいだろう」「もう着ないし」という言葉は、兄弟がそれぞれに31年前の真実を見届けた後に、平穏な日常を考えていないことを示唆している。
小さな救いは、「1人になるのは嫌だ」と呟いた稔の言葉だ。
そしてもうひとつ救いになりそうなのは、他人の立場から田鎖兄弟に寄り添いたいと願い、過去の事件や犯罪被害者について知ろうと積極的に動いている宮藤の存在だ。
その宮藤の視点が、やり場がなく閉ざされたままの真と稔の世界を切り開いてくれるかもしれない。
そして、田鎖兄弟に『事件の決着』後の開かれた人生を見せてくれることを願ってやまない。
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[文/かな 構成/grape編集部]