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【『ファイトソング』感想・3話】きれいに出来すぎてる「形の恋」は孵化するか・ネタバレあり

By - かな  公開:  更新:

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Twitterを中心に注目ドラマの感想を独自の視点でつづり人気を博している、かな(@kanadorama)さん。

2022年1月スタートのテレビドラマ『ファイトソング』(TBS系)の見どころを連載していきます。

かなさんがこれまでに書いたコラムは、こちらから読めます。

どうして偽装恋愛・偽装結婚ものはこんなに面白いんだろう。

本来、恋愛や結婚という形式から得るメリットだけを求めて感情そのものを目指さないふたりが、やがて感情に振り回されるストーリーは、概ね定型ではあるけれども独特のむず痒さがあって、目が離せなくなる。

つまるところ、私たちは「ひょうたんから出た駒」だったり、「嘘から出たまこと」だったり、人が無欲な状態から何かを次から次に得ていく物語が大好きなのだと思う。

だから偽装恋愛を描くフィクションは、主人公になるカップルの無欲さ具合を応援できるかどうか(リアリティももちろん大事だけれど、少々荒唐無稽だとしても、応援したくなる設定かどうかの方が重要だと思う)。

そして二人の無欲さを揺さぶり、突き崩すイベントのさじ加減の両方が、縦糸と横糸のように大事だと思うのである。

形だけの恋がどのように変化を遂げるのか…

そういう意味で、ファイトソング(TBS火曜22時 主演・清原果耶)は、『固くて手強い』偽装恋愛ドラマだと言えそうだ。

目標半ば、事故で夢を頓挫(とんざ)し、更に難病を抱えていて、思い出作りをしたいヒロイン・木皿花枝(清原果耶)と、形だけでも恋を経験して、とにかくエモーショナルな曲を書きたい、今にも解雇されそうな崖っぷちミュージシャンの芦田春樹(間宮祥太朗)。

不憫さでいえば、二人共に近年の偽装恋愛ドラマのなかでもトップクラスである。そして、共に状況が切実な分だけ、恋愛感情そのものに対する無欲さの鎧も固い。

真面目な二人は、とにかく恋の形だけを再現しようと割り切っている上に、更に恋の条件を細かく分析して、それを優等生的にトレースしつくしてしまうのである。

恋人つなぎの手のひらも、中華街のデートも、夕日のファーストキスも、アクシデントの余地がないほど優等生的である。偽装恋愛の縦糸も横糸もみっしり詰まっている。

※写真はイメージ

そのみっしりとした詰まり具合が不憫な境遇の二人を反転させて、この3話では、ほんのりとした可笑しみを生んでいた。

生真面目で、それゆえにちょっとズレている二人が、恋の形を熱心にトレースしているのと対照的に、二人を見守る周囲は本当の意味で恋に悩み、傷ついている。

「それは恋の形をしてるし限りなく恋に近い何かだけど、まだ恋じゃないなあ」と思わせる主人公二人。

対して、と思わせる主人公二人に対して、花枝にフルスイングの空振りで片思いしている幼なじみの夏川慎吾(菊池風磨)も、同じ幼なじみで、その慎吾にずっと片思いをしつつ、花枝のことも大事だから、自ら姐御キャラになって三角関係のバランスをとってしまう萩原凜(藤原さくら)。

また、凜が働く理髪店の店主で、養護施設の施設長の磯部直美(稲森いずみ)を密かに想っているらしい迫智也(戸次重幸)の、いかにも大人らしい控えめな磯部への視線も、春樹のマネージャーとして曲が書けない春樹を叱咤(しった)しつつ、作曲のための「恋の経験」には複雑な想いで苛立つ伊達弓子(栗山千明)も、みなそれぞれに切なくて健気だ。

※写真はイメージ

真剣に誰かに恋をしているなら、大胆に形から入ってあえて関係のバランスを崩すことなんかできない。

ジェンガのように、今の全体の形を崩さないように細心の注意を払いながら、一つ一つパーツを手に入れるしかない。

しかし形だけで恋に踏み込もうとする花枝と春樹の大胆さが、静かに膠着(こうちゃく)していた周囲の『本当の恋』を突き動かす瞬間も沢山描かれるのだろうと思う。

その目線のやさしさにも、安定の岡田惠和の脚本として期待したい。

まったりと素敵なデートの回になった3話目だったが、どうやら予告を見る限り次回は急展開のようだ。

恋の形を完璧に追い求めている主人公二人を、これからいろんなことが揺さぶるのかもしれない。

それにしても、こんなにきっちり形から入って大丈夫なのかなと思いながら見ていて、ふと気が付いた。

空手は、『型』から入って、それを基礎として修養を重ねて己を高めていくもの。

きっとそういうヒロインの恋なのだろうと思う。


[文・構成/grape編集部]

かな

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