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【『ファイトソング』感想・4話】その空振りは当たるとでかい・ネタバレあり

By - かな  公開:  更新:

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Twitterを中心に注目ドラマの感想を独自の視点でつづり人気を博している、かな(@kanadorama)さん。

2022年1月スタートのテレビドラマ『ファイトソング』(TBS系)の見どころを連載していきます。

かなさんがこれまでに書いたコラムは、こちらから読めます。

人生の勝負時だからこそ、痛みをこらえて現実を直視する。何が自分に足りていないのか、今の立ち位置を必死で考える。

望むものを得られない、あるいは失う未来は考えたくもないけれど、せめて立って勝負をしているうちは、ファイティングポーズを取っていたいと思う。

ヒロイン・木皿花枝を演じる清原果耶の見応えある演技と、彼女を取り巻く二人の男の恋模様を描く、優しい切なさが大好評の『ファイトソング』(TBS火曜22時)。

進行性の病を抱えたヒロインの思い出作りと、キャリア崖っぷちのミュージシャン・芦田春樹(間宮祥太朗)の曲作りを兼ねた『形だけの恋』は順調に見えた。

しかし4話目、春樹の曲作りの締め切りが早まったことでストーリーは急展開する。

ずっと『裏拍』の効いたラブストーリーだと思っている。

2話目で、春樹は清掃に来る予定だった花枝が来なかったことで一歩踏み出してメールを送るし、花枝もメールを読んで、春樹に会おうと走ってきて、会えなかった落胆が思い出作りを決断させる。

今回も、これで『恋の取り組み』が終わるのかという不安と、連絡のない焦りが花枝の恋心を先鋭化させていく。綺麗に恋の器を作れてしまう二人だからこそ、その器を満たすための時間が重要なのだろう。

間宮祥太朗が演じる芦田春樹は、世間知らずを自覚しているのか、年下の花枝相手にも常にフラットに接している。

「うん?」と、相手の気持ちを確かめるように返す相づちの柔らかさがとてもいい。そんな春樹に、花枝は「情けないのはいいけれど、自分勝手なのはダメです」と言う。

今の価値観を鮮やかに切り取った『技あり』のセリフだと思う。

心が弱っていく花枝を見て、慎吾は…

一方、花枝の幼なじみで、花枝に片思いし続けている夏川慎吾(菊池風磨)もまた、形から恋に踏み込んでいく花枝の様子にこれまでと違う焦りを感じ始めている。

これまで面白くないなりにも花枝の『恋の取り組み』を応援してきたのは、とにもかくにも花枝に元気でいて笑ってほしいからだ。

花枝が春樹をムササビみたいだと言う、そのムササビのぬいぐるみを買ってあげようなんて、片思いの男としてはズレた思いつきも花枝が喜ぶと思うからだ。

その慎吾が、春樹からの連絡が途絶えて心が弱っていく花枝の様子を見て初めて困惑したように呟く。

「もう、それさあ。マジで」

途切れた言葉のあとには『あいつをマジで好きになってるじゃん』、そんな言葉が続くのだろう。

でも慎吾はその言葉を言えない。花枝に「何?」と促されても「いや。いい。言いたくない」と意思をもって口にするのを拒む。

まるで言葉にしたら何かが現実になるような、繊細な恐れが慎吾にそれを言わせない。

本来ならば、春樹と花枝がうまくいかなくなれば慎吾にとってプラスになるはずなのに、花枝を見る慎吾の表情は曇っている。

いつもはチャラくて明るい慎吾の、その瞬間のスッと改まった真顔が印象的だ。その落差を菊池風磨は丁寧に演じ分けている。ずっと幼馴染として一緒にいたのに、互いの道が離れていくということの本質を慎吾は理解しようとしている。

ここまでの4話分、常に片思いは空振りで、恋愛ドラマにおける片思い役男性のスラングである『当て馬』しぐさ全開の夏川慎吾だが、これはもう、ドラマとして意図的なものなんだと思う。

三角関係の3人はどのように動き出すのか!?

今のところは読みの外れたコースでぶんぶん空振りしているけれど、スイングは恐ろしく大きいし鋭い。これは、かすっただけでも場外に飛ぶんじゃないか。

芯を捉えたら満塁ホームランで試合はひっくり返るんじゃないか。そんな予感を感じさせる、微かな異変だった。

春樹との恋や、聴覚障がい者である葉子(石田ひかり)との出会いで、絶望によどんでいた花枝の人生は緩やかに流れ始めている。

かつての空手の仲間たちに出会い、現役で練習している相手には歯が立たないと分かっていても、組み手を志願して体を動かすこともその現れの一つなのだと思う。そんなかつてのライバルに手加減のない光(芋生悠)の清々しさがとてもいい。

春樹はそんな花枝に触発されて、突き動かされたように曲を書く。

慎吾は、ようやく来た春樹からの連絡に喜色満面の花枝に、心の痛みを堪えながらすぐに行くように促す。

みんなそれぞれに、不利や自分の不足を知りながら、ファイティングポーズを取って立っている。人生に立ち向かおうとしている。

勝てても、こてんぱんに負けたとしても、納得のいく試合終了であってくれたらいいなと願う。そろそろ物語は折り返しである。


[文・構成/grape編集部]

かな

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