【考察】ファミリーは勝てるのか? 最終回で考えられる“可能性”『ザ・ロイヤルファミリー』第9話
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【考察】耕一、大胆な提案をおこなう真意が? 『ザ・ロイヤルファミリー』第8話テレビドラマ『ザ・ロイヤルファミリー』(TBS系)第8話を徹底考察。栗須と耕一の関係に変化が…。
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SNSを中心に注目ドラマの感想を独自の視点でつづり人気を博している、イラストレーターの渡辺裕子(@satohi11)さん。
2025年10月スタートのテレビドラマ『ザ・ロイヤルファミリー』(TBSテレビ)の見どころを連載していきます。以下、ネタバレが含まれます。
渡辺裕子さんがこれまでに書いたコラムは、こちらから読めます。
耕一(目黒蓮)、栗須(妻夫木聡)、そしてロイヤルチームは「ロイヤルファミリーを、有馬記念で勝たせる」という大きな夢に向かって着実に進んでいた。
しかし2024年秋の天皇賞で、ジョッキーの翔平(市原匠悟)が落馬。
ファミリーも骨折し、どちらもしばらく療養を余儀なくされる。
その後、翔平はスランプに陥り、ファミリーも目の不調が発覚したが、手術できる獣医が見つからない。
「ジョッキーを翔平から交代させるべきではないか」「最悪の可能性を考えるとファミリーは引退した方が…」などの意見が出る中、フランス在住の医師だけが手術可能と聞いた耕一は、ある決断をする。
時速60kmものスピードで駆けるサラブレッド。
それを乗りこなすジョッキーたちの勇気と技術には感服するしかない。
彼らは万全の準備をして、練習を重ね、しかしそれでもアクシデントは起こる。
ファミリーから落馬した息子の翔平が担架で運ばれる様子を、震えながら見つめる加奈子(松本若菜)の表情の痛ましさに、胸がつぶれそうだった。
ロイヤルチームの一員としての加奈子は、ファミリーと翔平に思い切り走って勝ってほしいと、強く願っている。
けれど母としての加奈子は、危険と隣り合わせの息子のことが心配で仕方がないのがよくわかる。
家族が騎手であるというのは、とても誇らしくて苦しいことなのだろう。
出走する翔平を手を振りながら送り出すロイヤルチームの人たちもきっと同じで、血のつながりがなくても、チームは家族として翔平を応援し、心配している。
そんなロイヤルチームの懸命さに、周りの人々も手を差し伸べる。
チームから離れた隆二郎(高杉真宙)も、苦しみつつ勝つことを諦めない翔平に、ライバルなのにアドバイスを送る。
獣医師の沢渡(市川実日子)も、フランスまで説得に来た耕一に呆れながらも手術するために日本にやってくる。
ファミリーを預かることになった加奈子の牧場には日高の人々が助けに来る。
そしてそんな「応援したい」という気持ちは、このドラマをずっとみてきた視聴者も同じなのではないだろうか。
放送している時間はわずか数ヶ月だが、2011年から十数年、栗須の隣でロイヤルの馬たちを見守って、とうとう2025年までやってきたような気がしている。
あんなに小さかったファミリーが、おとなしかった翔平が、こんなに立派になって…君たちのためならできることはなんでもするぞと、親戚のような気持ちで言いたくなる。
人と接することが苦手で口下手だった耕一も、フランスまで行く行動力を身につけ、相手に気持ちを伝える言葉の力を手に入れた。
彼も、本当に成長したひとり。そのがんばりを、応援せざるを得ない。
栗須と加奈子のふたりについても、同じ。
なかなか結婚しない栗須と加奈子に、チームのメンバーだけでなく視聴者もやきもきしていたと思うのだが、翔平とファミリーが復活した喜びにひたった後の、加奈子からのあらためてのプロポーズ、素敵だった。
「結婚してほしい。言ったでしょ、私が決めるって」
加奈子が心を決めるまで、周りが心配するくらい長い間待っていた栗須。
不器用な大人ふたりの恋はなんとも愛らしい。そして返事するより先にまず泣いてしまうのが、さすが泣き虫の栗須。
とにかく栗須は、うれしくても悲しくても泣く。
物語のはじまりの頃の涙は、心が揺れる若さゆえだと思ってたら、中年となってもまだ泣いている。
でもあんな風に、感受性豊かな大人がひとりくらいいてもいい。
北海道の牧場を父と仲間たちと守る加奈子と、東京で耕一を支える栗須。
かなりの遠距離結婚ということになるのだろうか。
でもきっとふたりのペースで、これからずっと並走していくのだろう。
おめでとう。
オープニングではその回で大事な役割を持つ馬にスポットライトがあたる。
今回、最終回を待たずにとうとう「ロイヤルファミリー」が出てしまって驚いた。
有馬記念でファミリーは勝てず、来週出る名前は耕一のライバル・展之(中川大志)の馬『ソーパーフェクト』なのだろうか。
それとも…。
もしかしたら、ファミリーの子どもの名、という可能性もあるかもしれない。
ファミリーの勝利という夢は叶わなかったけれど、その夢は止まらずに次の世代へとずっと継承されていく、みたいな展開が。
だけどやっぱりここまできたら、たくさんの試練を乗り越えたファミリー自身が、勝って夢を叶える瞬間を、チームのみんなと一緒に見届けたい。
こんなに長く、実際は数ヶ月だということを忘れそうなほど濃厚な時間を過ごしたロイヤルチームと離れてしまうのが、今からすでに寂しくて仕方ない。
ファミリーの勝利を信じて、いよいよ次回は最終回。
[文/渡辺裕子 構成/grape編集部]
渡辺裕子
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