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【TOKYO MER感想 8話】答えの出ない過去を問い続けるということ・ネタバレあり

By - grape編集部  公開:  更新:

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Twitterを中心に注目ドラマの感想を独自の視点でつづり人気を博している、かな(@kanadorama)さん。

2021年夏スタートのテレビドラマ『TOKYO MER』の見どころを連載していきます。

過去に不義理や過ちがある。誰かを傷つけたり、属していた組織にダメージを与えてしまった。

その時はそうするしかなくて必死だったけれども、後で考えてみればもっと他にやりようはあったと思う。

ずっと後になってそれを誰かに話すのも、言い訳に思え、都合よく許されたいみたいで何かが違う。

そんな湿った後ろめたさは、誰の人生にもあると思う。心の片隅の消せない湿気も、自分の人格の大事な一部ではあるけれども。

『TOKYO MER』8話の舞台は小規模病院

最終章に入り、ストーリーが加速しているテレビドラマ『TOKYO MER』。第8話の今回、敏腕救命医にしてMERチーフ喜多見幸太の過去、『空白の一年』がいよいよ明らかになった。

今回の舞台は土砂崩れで主電源を喪失した小規模病院である。

非常用電源が数時間稼働している間に入院患者を他の病院に移送するという、当初は難易度が高くないと想定された今回の任務。

その中で、MERチームの一員であり厚労省の医系技官でもある音羽(賀来賢人)は、かねてから疑念を抱いていた喜多見とテロ活動との関わりについて直接本人に斬り込む。

「このメンバーには、正直に全てを話すべきです」

それは喜多見の過去がどんな内容であっても、自分を含め「このチームであれば受け止めます」という意思表示の裏返しであったのだろう。しかし、チームの存続を天秤にかけた結果、何も語らない喜多見に音羽は失望してしまう。

その失望が、喜多見がテロに加担している可能性の落胆よりも、自分たちを信用せず秘密を明らかにしてくれないことへの落胆だと表情や言葉に滲む音羽の真摯さが切ない。

かくしてMERチーム最大の長所であるチームの連動性は損なわれたまま停電した病院にたどり着く。

しかし、現場の病院は、続く小規模の崩落で非常用電源も損なわれてしまい、生命維持に必要な医療機器がほぼ使えない状態。MERは手足が縛られたような救命活動に突入する。

パニックが畳みかけるスピードと密度でいえば今回が一番激しいかもしれない。

そのくらい、電源を喪失すること、機器が万全に使えないということが医療行為にとって致命的だと分かるエピソードだった。

思えばこのドラマはずっと、超人的な腕前の医者が1人いたとしても、救命医療はあくまでチームありきであること、チームの連動性こそが医療の質を上げるという姿を描き続けてきた。

ここで更に、道具と環境あっての100%の医療だとシビアに描く。

そして同時に、看護師という職業ゆえに子の登園を他の父母に渋られる夏梅も、短絡的な政治家の判断で治療を後回しにされそうになる妊婦も、多忙すぎて我が子と別居状態になっている麻酔科医の冬木も、医療機器不足なら自分の救命処置は必要ないと申し出る老人も、このドラマは、今、感染症と泥沼の戦いを続ける社会の写し絵だと分かる。

『TOKYO MER』喜多見の空白の一年が明らかに

暗闇の中、壊れた非常用電源を1人で復旧しながら、喜多見はイヤホン経由でメンバー相手に自らの過去を明かす。

海外の紛争地帯で、1人のテロリストを患者として治療したこと、患者である以上、政府に引き渡さずにかくまったこと、結果、テロリストは病院から去り、隠匿(いんとん)した喜多見は逮捕され服役したこと……。

喜多見の手で非常用電源は復旧するものの、引き換えに喜多見自身は重傷を追ってしまう。

崩落の危険がある場所で、繰り返される退避命令に背き、MERチームの中でもとりわけ『もっとも命令に背けない男』の音羽が、真っ先に喜多見の救命に走る。

ドラマとして『お約束』の展開かもしれないが、そうと分かっていてもやはり胸が熱くなる。まさにTBS日曜劇場の本領発揮ともいうべき名場面だった。

どんな人間でも救いたいと願って自分が治療した相手が、野に放たれたあと、無差別に人を殺傷する。

1をとったことで多数が失われる。決して医療は数の論理ではないけれど、あの1つの治療行為は果たしてそれで良かったのか、喜多見のような男が考え、悩まないはずがないと思う。

その苦悩は時に喜多見を無謀すぎる救命に向かわせているようにも思える。

厚労省の医系技官である音羽もまた、官僚として制度設計や今以上に大きな仕事をせねばならない使命感と、目の前の命を無心に救いたいジレンマに最初から悩まされている。

ともに無情な心の天秤に翻弄される救急救命医のバディは、物語の最後にどこにたどり着くのだろうか。

そして喜多見の過去は明らかになったが、テロリストであるエリオット椿が呟いた喜多見との『約束』の内容は、まだ明かされていない……。

TOKYO MER/TBS系で毎週日曜・夜9時~放送

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[文・構成/grape編集部]

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