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【エルピス 第9話 感想】最終回直前、大門享の死で大きく動き出す

By - grape編集部  公開:  更新:

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Twitterで人気ドラマの感想をつづり注目を集める、まっち棒(@ma_dr__817125)さんのドラマコラム。

2022年10月スタートのテレビドラマ『エルピス—希望、あるいは災い—』(フジテレビ系)の見どころや考察を連載していきます。

岸本(眞栄田郷敦)が大洋テレビをクビになる2週間前、浅川(長澤まさみ)は『ニュース8』の会議の場で、未成年売春で逮捕された男と被害者の中村優香との関係を知った。

浅川は『印象操作』であるという懸念を示し、ニュースを止めようとしたものの、認められることはなかった。

そして、浅川は岸本が退社した本当の理由を知る。本城彰(永山瑛太)が真犯人であるとする記事が直前で流れたことを理由に退職を願い出たのだと思っていた。

「何かしたところで世界はマシにならない」

浅川の頭には、岸本と話した最後のこの言葉が浮かんでいた。

一方岸本はその頃、週刊潮流の編集長・佐伯(マキタスポーツ)から、うちに来ないかと誘われていた。佐伯は、岸本には真実を追い求める者に『あるべきもの』があると強く感じていた。

思えば岸本は、心砕かれたとしても何だかんだ諦めず踏ん張り、この真実を掴んだ。確かに強大な力の前に立ち行かなくなる時もあったが、その度にもがいて自らを鼓舞してきた。

単純なところもある故、周りが見えなくなるという危うさもありながら、真実を伝えようのする者の心にあるべき情熱は絶えることがなかった。

それを浅川も認めて、真相解明を共にしてきたのである。

そんな岸本を同じように認める村井(岡部たかし)は、大門副総理(山路和弘)の娘婿で秘書の大門亨(迫田孝也)に岸本を引き合わせる。

村井は、派閥で一番真面目な享から大門のボロを聞き出せると思い、以前から関係を持ってきたのだという。

そして2年前、身内の議員のレイプ事件をもみ消したことがあり、その内部告発をしたのが享だった。

村井は当時、享が大門からもみ消すように指示を受けたというインタビュー内容を含んだ特集を組んだが、お決まりのように放送直前にお蔵入りとなっていた。その理由もタイミングよく、大門が副総理になって上層部がゴネたからだった。

ボロが出ても圧力をかければ全て済む話。それが権力を利用できる大門のやり方なのである。

だがこれほどの大きな真実を自分の手で明らかにさせられる機会など二度とこない、何としてもやり遂げたい、そんな欲望と僅かな正義感を胸に、村井は何度も上に掛け合った。

そしてそれを機に、報道部からあの制作者の墓場に異動させられたのだった。

村井が真実を明らかにしようとして飛ばされたのは今回が初めてではなかったのである。村井の度重なるパワハラが原因だと皆が思っていただろうが(少なからずあっただろうが)、真相は正義と情熱に従った結果だった。

「渡すくらいなら俺が墓場まで持ってくっつうんだよ」

いつの間にか飲み仲間にまでなった岸本に、村井はそう笑いながら当時の取材データを手渡した。

「俺ん中に、もうあの情熱が消えちまってる」と浅川と泣きついていた夜もあった。村井は誰にも渡すはずのなかったバトンを、かつての自分を重ねた岸本に、繋ぐのだ。

村井という味方を得た岸本は…

岸本はその勢いのまま、享に取材をお願いする。そして薄暗いアパートの一室で享はぽつりと語り始めた。

取材を承諾したきっかけとなったのは大門の右腕となる斎藤(鈴木亮平)の存在だった。

現在は斎藤はフリージャーナリストとして絶賛知名度を上げている最中だが、大門はゆくゆく自分の地盤を継がせるつもりだという。そして享の妻子もいずれ…。

大門が、娘婿の自分よりも大事な斎藤という駒を見つけたのである。加害者であるはずの男を守り被害者の命を奪った事実は、達にとって妻子を失う以上に背負っていかなくてはならないほど深いものだった。享はこう話す。

「自分の罪深さを忘れて生きていくなんて、僕にはできない」

同じように罪を背負って生きることを決めた岸本だったが、いつの間にか一人になっていた。「僕の友達は、真実だけだ」と『愛と勇気だけが友達』のように自分を評価するほどだ。

だが享との間には似た者同士しかわからない特別な空気が漂う。一人に見えても、実は独りではないこともある。

その後、佐伯からの指示で遺族への取材を試みるも手こずっていた岸本に、享は大門の事務所を退職したことを報告し「どうか思うようにやってください」と笑って見せた。

その連絡に安心した岸本だったが、それを最期に享からの着信が鳴ることはなかった。

大門享が突然、死んだ。

その情報は浅川や村井にも告げられた。享の死去は世間には病死と報道され、早急に葬儀が執り行われた。

葬儀場には悲しむ妻子と、大門と斎藤の姿。そして、いつもの服装の村井の姿があった。

村井がいつものように調子の良い言葉でマスコミ対応を終えた斎藤に話しかけに行く。そしてこう迫る。享の死は本当には他殺なのではないか…。

それを聞いた瞬間、斎藤の煙草を持つ手が止まる。そして村井は享ごと闇で葬られたことを確信する。自らの権力の維持のために、人の命が奪われたのである。

政界の道を選んだ斎藤を見る目は完全に『そっち側の人』を見る目に変わっていた。

一方の大門は享の死を心から惜しみ、大変優れた私の秘書だったと取材で語り、マスコミの心を掴んでいた。

記者にその録音を聞かせてもらった村井は、記者からその録音データを奪い取り、踏みつける。

踏みつけて、ただ力を込めて、破壊した。村井の中で何かが弾けていた。

常に真実は一つ

一方の浅川はまたバランスを崩していた。岸本が掴んだ折角の真実を滝川(三浦貴大)に奪われそうになるもなんとか守った浅川を他所に、享という重要な味方が失われた。

いっそ木っ端微塵に壊れればいいと、浅川はふと思う。

そして今日も何事もなく『ニュース8』の放送が終わっていくのだ。

それからは一瞬の出来事だった。

突然、スタジオに大きな音が響く。

「ざっけんなてめえら!どいつもこいつも正義ヅラしやがってよ!」

村井が怒号を上げスタジオに入ってくるやいなや、既に『壊れている』報道を、物理的にぶち壊していく。

スタジオが騒然とする中で、それをただ見つめていたのは浅川だった。

『いっそ木っ端微塵に壊れて仕舞えば良い』と、そう願っていたことに気づいた時、浅川の目には光が差した。

今我々が見える真実はただ、村井がセットを壊している、ということだ。常に真実は一つである。

だがその真実が置かれる環境や、それに触れる人間の立場、何を大事に思い、何に価値を見出すかが異なれば、その瞬間に真実は多面的となる。

第9話で出てきた善玉菌も悪玉菌の話でも、悪玉菌だと思っても本当は善玉菌であり、悪玉菌のように思えても、それは他には善玉菌のように見えているかもしれない、というこのなのだ。

それほど世界が曖昧なものなら、己の信じる真実と向き合い、考え続ければ良いのである。

では村井のこの行動は、悪玉か?善玉か?そしてその裏で流れるエルピスのメインテーマに見出すのは、『災い』だっただろうか、それとも『希望』か…。

それを決めるのは、これを見る、私たち自身なのである。

エルピスはついに次週、最終回を迎える。連続殺人事件の真相が明かされる。

浅川と岸本が迎えるのは果たして災いと希望、どちらの終着点か。是非、リアルタイムで体感したい。


[文・構成/grape編集部]

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出典
エルピス ―希望、あるいは災い―

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