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【『不適切にもほどがある!』感想8話】小泉今日子が本人役でサプライズ登場 一方、ムッチ先輩こと磯村勇斗は…

By - かな  公開:  更新:

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『不適切にもほどがある!』第8話コラム

SNSを中心に注目ドラマの感想を独自の視点でつづり人気を博している、かな(@kanadorama)さん。

2024年1月スタートのテレビドラマ『不適切にもほどがある!』(TBS系)の見どころを連載していきます。

かなさんがこれまでに書いたコラムは、こちらから読めます。

決して多数派ではないSNSでの意見が、ネットの記事がきっかけで不自然にクローズアップされ、それがSNSにフィードバックされて本格的に火の手が上がる。

一度燃えたら、不自然な着火かどうかはもう関係がない。焼け野原になるまで悪評は燃え続けるし、何なら燃え尽きても数年後にまた火がつくこともある。

そんな現代の悪意の錬金術を、毒とブラックコメディを散りばめて見事に描きだした『不適切にもほどがある!』第8話だった。

時は昭和61年。中学の体育教師、小川市郎(阿部サダヲ)は妻と早くに死に別れ、娘と二人で暮らしている。お節介で心根は熱いが、いかにも昭和の男らしく、配慮やリテラシーはない。

そんな小川が偶然令和にタイムスリップしてしまう。昭和とは価値観の違う社会で騒動を起こしつつ、その明快な言動が面白がられたりもしている。

しかし小川は、令和で知り合った犬島渚(仲里依紗)が自分の孫であること、そして自分と愛娘の純子(河合優実)が、阪神淡路大震災で死ぬことを知ってしまう。

一方、小川とは逆に令和から昭和にやってきた向坂サカエ(吉田羊)と息子のキヨシ(坂元愛登)もまた、昭和に居場所を得つつあった。

『不適切にもほどがある!』第8話コラム

今回のエピソードは、スキャンダルと世間について。

一度でも反社会的なスキャンダルで糾弾されたタレントは、二度と元の場所で働くことは許されないのかという問いかけである。

一度だけの「魔が差した」不倫で、地位を失った7年目のアナウンサー・倉持を小関裕太が好演している。

「なるほどこれは魔が差して流されたなー」という優しい風情で、過去を悔やみ、悩み、詫び続ける普通の感覚の男性である。

『不適切にもほどがある!』第8話コラム

倉持の表舞台への復帰に最後まで反対する栗田(山本耕史)が、実は自身も不倫の経験者で、妻の知人達から17年も過去の不倫を糾弾され続けていると明かされる。

その場面の薄ら寒さ、気味悪さと、そして小川の絶妙なタイミングの「気持ち悪っ」の一言で、全てに合点がいく感覚は何とも言いがたい。

その衝撃の食事会の後、倉持は迷いを捨てて表舞台に復帰する。

『不適切にもほどがある!』第8話コラム

誰に何を償って、どう家族としての時間を生きるか。

倉持のようにイバラの道を選んでタフになるか、栗田のように時折攻撃されるのを甘んじて受けて生きるか、それぞれの道なのだろうと思う。

ただ、他人からの糾弾にどう向き合うかはそれぞれとして、これは不倫そのものを肯定するエピソードではない。

たとえ20年近く経っても、家族にも、属するコミュニティにも噂と傷は残る。おそらくその先も、数十年も残り続ける。なかなかにゾッとする描き方ではあった。

『不適切にもほどがある!』第8話コラム

過去の宮藤官九郎による作品を演じた名優たちが、ゲストとして次から次に登場するのも今作の大きな楽しみだが、今回ついに『クドカン作品のミューズ』、キョンキョンこと小泉今日子が本人役で登場している。

昭和のシーンでは衣装のみ。ちらりと映る赤いチェックのワンピースに、『木枯しに抱かれて』を歌っていた頃かなと懐かしく思った。

令和では58歳の小泉今日子として、年齢を重ねた美しさと、茶目っ気をもっての登場だった。

『不適切にもほどがある!』第8話コラム

思えばキョンキョンはどの年齢の時も、彼女自身を誤魔化そうとしなかった。58歳の今も、ちゃんと年相応に美しくて、素敵だ。

おそらく若い世代が見て、年齢を重ねていくのが怖くならない、人生が楽しみになる生き方のお手本のひとりだと思う。

そして最後に、ドラマの癒し枠・ムッチ先輩(磯村勇斗)は、依然無垢でおバカな癒し枠のまま令和から昭和に帰っていった。

昭和に青春の輝きを放っていたムッチ先輩は令和の今、随分と恰幅のいいおっさん(彦摩呂)になっていた。

『不適切にもほどがある!』第8話コラム

キョンキョンが素敵なおばさんになって、錦戸亮が古田新太になって、磯村勇斗が彦摩呂になるらしい38年間という時間だけれど、でも生きていたらとりあえずそれでいいよね、と笑い泣きしながら思ってしまう。

よくタイムリープの物語では、悪い未来を変えるために過去で奮闘するけれど、小川市郎は過去の自分達の人生が報われる未来であってほしいと願って未来で闘っている。

昭和生まれとして時に理解できない今の時代を嘆くより前に、次の世代の為に、そして自分たちの為に、よりよい社会になるようもっと足掻かなくちゃなと、ふと思った。


[文・構成/grape編集部]

かな

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