【妻、小学生になる。第9話 感想】『つましょー』は新島家だけが主役ではない・ネタバレあり
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Twitterで人気ドラマの感想をつづり注目を集める、まっち棒(@ma_dr__817125)さんのドラマコラム。
2022年1月スタートのテレビドラマ『妻、小学生になる。』(TBS系)の見どころや考察を連載していきます。
人は失くしたものばかり見てしまう。それは、失ってからその大事さに気づくからなのだろうか。しかし本当に見つめるべきものは、すぐそばにあるのだ。
最終回前編となる第9話は、再び消えてしまった貴恵(石田ゆり子)と残された人々が選ぶこれからが描かれる。
万理華を取り戻した千嘉 その一方で…
あの日から万理華(毎田暖乃)は、貴恵としての万理華のことをずっと見ていた。明るくて、元気で、皆に人気な万理華。夢の中で、そんな自分が『ママの理想』と思い込んで…。
「誰も万理華のこと見えていない」とは、人格が浮遊して周りから見えないということであるが、生きていながらも誰も自分のことを見てくれる人がいないという意味もあると思う。
「自分は必要ない」と思い詰めて、消えたいと願ってしまったのだ。
でも、今は違う。
ずっと素直になれなかった千嘉(吉田羊)だったが、真っ直ぐ、大切な万理華の目を見て謝る。そんな千嘉を見て、万理華はその小さな身体でそっと抱きしめた。
一方、貴恵を失った圭介(堤真一)と麻衣(蒔田彩珠)。
うちのママは10年前に死んだ。それからお父さんと私は、ゾンビになった。
これは第1話で語られた麻衣のモノローグ。
そこに、新たな言葉が加わった。
10年後、ママは帰ってきた。小学生の姿で。
止まったままの10年が再び動き出し、新しく色づき始めた生活。
なのに、『ママはまた消えてしまった』。同じ家にいるだけの、心もバラバラのすれ違いの生活に逆戻りした。
そんな二人を守屋(森田智望)や蓮司(杉野遥亮)は気にかける。
連絡の取れない麻衣を心配し、蓮司は新島家を訪れるも、麻衣は一人になりたいと帰してしまう。
友利(神木隆之介)も心にはぽっかりと穴が空いたままだ。
遺してきた大切な人達に最後の別れをする貴恵
一方の貴恵はまだ成仏できていなかった。声が届かないと分かっていながら、遺してきてしまった大切な人達に最後のお別れをしていた。
ある日、貴恵は漫画を描き終えた友利のもとへ来ていた。
友利が心配でこちらも成仏できていなかった吉原(かたまり/空気階段)と共に完成した漫画を読む。
自信満々で、でもどこか不安気な友利の横で、貴恵は一人、確かな友利の成長を感じていた。
自分の力で、逃げ続けた現実に一歩踏み出した、たった一人の大切な弟に、貴恵は別れを告げるのだった。
貴恵は千嘉と万理華にも会いにきた。千嘉は、頼りにしていた貴恵に何もしてあげられなかったことを悔やんでいるようだった。
しかし貴恵の表情は暖かい。
貴恵の望みは見返りなんかではない。今、万理華とこうして向き合っていることが何よりの望みなのだと思う。
貴恵の言葉はいつも周りを包んでくれる。周りをポンコツにするなんていわれてしまうのは、そんな貴恵のことをみんなが頼りにしているからなのだ。
圭介は家で一人、貴恵の言葉を思い出す。俯いた時には顔をあげてと頬を包んでくれる大切な人の声。
「失ったものを見つめて、死ぬまで過ごすの?」
夢から覚めた時が一番怖い。どんなにいい夢を見て幸せに浸っていても、また失う。幸せはそう長くは続かないのだ。
しかしそれで全てが元通りになるわけではない…。この奇跡がもたらしたもの、貴恵が帰ってきた意味を考える圭介。
ここにはもう、貴恵はいない。しかし圭介は、一人で歩み出す。自分一人の力で、そしてほんの少しの貴恵が残してくれた大切な思い出に後押しされ、進んでいく。
圭介の10年間分の言葉
「10年前、あの時、私、ママと一緒に消えちゃえばよかったんだよ」
ご飯も食べず、部屋に引きこもる麻衣に、圭介は10年分の、言葉を。
「ママがいなくても、二人で一緒に生きていく道を探さなきゃいけなかったんだ」
圭介は貴恵が亡くなってからというもの、麻衣と向き合うことすらずっと逃げ続けてきた。
麻衣をゾンビにさせたのは圭介なのだ。時間を止めたのは死ではなく、生きながらにして『生きること』を諦めてしまった圭介だ。
でもこれからは違う。
「これからは、なくしたものじゃなく、ママがくれたものを見つめて、生きていかないか?」
麻衣が大人になりきれなかったのは、ずっと甘えられず、泣きたくても泣けずに、10歳で時は止まっていたからなのだと思う。
そして麻衣はドアを開ける。
10年間、閉じ切ったままだった心が開く。
圭介はやっと貴恵が帰ってきた意味に気づけたのだ。失ったものをいつまでも見つめるだけじゃなく、これから生きていく世界を…。
そして周りの人に向き合い、前に進むことの方がずっと大事だということを。
貴恵を救った、万理華の言葉
貴恵は、あの公園でお迎えの時を待っていた。
もう十分わがままして、皆とはお別れしたから、もう思い残すことはない。そんな貴恵の前に、万理華は現れた。
「会いたいって思うのは、わがままなんかじゃないよ」
真っ直ぐな万理華の言葉に、貴恵の本音が溢れる。
「もう一度だけでいいから、会いたいよ。家族に会いたい」
万理華の優しい手が、涙で濡れた貴恵の頬を包む。
あの時、貴恵がひとりぼっちの万理華を優しく包んだように。
もうこの世に未練はない、そう思って別れを告げたが、貴恵は本当のさよならをできていなかった。
伝えたいことも言えずに、もう一度会いたいって思う気持ちを殺してまで。
そんな貴恵を救うのは、万理華なのだ。
この奇跡は万理華にも大きなものをもたらした。会いたいと思う気持ちを一歩踏み出す力を大切にすること…。
誰よりも優しい貴恵と万理華が周りを救い、そしてお互いを助け合う。新島家の物語だけじゃない。
白石家の物語でもあり、そして見ている私たちへ向けた物語。
今話と来週の2回続いての最終章としたことは、この物語が紡がれる意味としても非常に大きかったと思う。
次週、ついに『妻、小学生になる。』は注目の最終回を迎える。
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妻、小学生になる。/TBS系で毎週金曜・夜10時~放送
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[文・構成/grape編集部]